しかし、醍醐が選んだのはなんと。
ではなく、2人に通っていない牌を切って放銃を回避する。
は5sが4枚見えているのでノーチャンスの牌だ。
を切っている白鳥は、36s待ちやカン待ちが出てくることは無いが、ペンは否定されていない。
醍醐がではなくを切った理由は、直前の大介が切っただ。
大介はアガれないをツモ切った後、手の中からを切っている。
役牌は以外全て見えており、をポンしているが切りが早いことから、大介の役はかチャンタ・一通・三色などが考えられる。
を切っているにも関わらず、を持っていたということは手の中に関連している可能性が高く、・チャンタ・一通の3つでは使うことができる。
例えばこんな形や
こんな形などが考えられる
醍醐は大介の手出しを見て、とではの方が当たる可能性が高いと考え、3s切りを選択。
この選択のすごいところは、が大介・白鳥どちらにも通っていないところだ。
大介の手がチャンタや123の三色だったとしたら、待ちになっているケースだって充分にあり得る。
たとえの方が3sよりもやや危ないと思ったとしても、3sが通るわけではなく、を切れば自身の受け入れが広いのであれば、を切ってしまう人も多いのではないだろか。
極端な言い方をすれば、醍醐の手からをツモ切って放銃したとしても、誰から何を言われることも無いだろう。
ただただ、得だと判断した選択を積み重ねていく__
醍醐の魂の籠った選択が、詰み寸前だった状況を切り開いていく。
次巡、大介のツモは。
を引く前にこのが顔を出していれば、あっさり決着が付いていた。大介も勝利まであと1枚というところから、牌のイタズラが続く。
は白鳥に通っていないため、を切って単騎に変更。
この変更により、醍醐の手が復活する。
を切ることができ、を引き入れカンでリーチをかける。
大介がを引き、中膨れの単騎に変更。
結果は流局。
勝負こそ決まらなかったものの、醍醐は勝負の決まる放銃を回避する。
そして南4局1本場。
6巡目、醍醐にテンパイが入る。
とのシャンポン待ち。役が無いためリーチが必要だが、が1枚切れているので見た目枚数で残り3枚。
ここが、醍醐がインタビューで語っていたシーンだ。
この局面での正解は、テンパイ取らずの打だと醍醐は言う。
理由は親番の白鳥が絶対に押してくるからだ。
白鳥は4着の優とかなり点差が離れているので、もし醍醐がリーチをかけても、よっぽどのことが無い限り攻めてくるだろう。
そのため白鳥と1対1のめくり合いになっても分があるよう、リーチを打つときは好形テンパイが望ましい。
理屈ではわかっているが、どうしても裏目を恐れてしまう。
もし次のツモがかで、アガリを逃して逆転できなかったら
と赤のくっつきに構えても、カンチャン待ちになって好形変化しなかったら…
それでも、醍醐は自身の選択を信じ、最適解を選んでいく。
最適解を選んだとしても裏目を引くことが多々あるのが麻雀だが、今回は醍醐に味方した。
最高のを引き、待ちでリーチをかける。
このが山に9枚残っていた。
親番の白鳥から出アガり、勝負を決める。
南場からの大逆転劇で、個人2連勝を達成。
麻雀は、長い目で見れば得な選択をし続けたプレイヤーが勝ちやすいゲームだが、プロの対局では、短期での結果を求められることも多く、短期がゆえに起きる葛藤は、見ている人の心を打つものがある。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
Twitter:@EzakiShinnosuke