さらに2枚切れのを手出ししている。
高宮はラス親の3着目なので、当然連荘がしたい立場だ。
その高宮が、カンチャンを落としてまで字牌を残していたのはやや不自然だ。
考えられるのは字牌が重なると嬉しい手、ピンズのホンイツや七対子などが思い浮かぶだろう。
その高宮が、10巡目にを手の中から切っている。
カンチャン落とし、安全牌の後に手から出てきたは、手牌に関連している可能性が高い。
仲林からはが3枚見えているので、このが手に関連しているということは、高宮がを複数枚持っている可能性が高い。
そうなると、は1~2枚しか残っていないことになり、松ヶ瀬・萩原の待ちは埋まっておらず待ちになっている可能性が高まっている。
ちなみにに関してはその逆で、仲林がを3枚持っているものの、高宮が序盤にを切っており、その周囲を持っていないとすると、松ヶ瀬・萩原が保持している可能性が高まるため、待ちになっている可能性は下がる。
仲林はを切ればテンパイだが、松ヶ瀬・萩原がテンパイしている場合かなり危険で、言うまでもなく放銃してしまえばラスでゲーム終了となる。
を切って、を使い切りテンパイ復活を目指す道もあるが、仲林のツモ番は残り1回。
実際の、松ヶ瀬医・萩原の手は
なんと2人とも役無しの待ちだった。
両者ともに待ちが薄いと感じ、出てもアガれないダマテンに構えていたのだ。
いつも打牌がスムーズな仲林が珍しく長考する。
仲林の選択は打のテンパイ取りだった。
2人に危険なことは重々承知の上での勝負。
理由は2つあり、1つは高宮のノーテン気配を感じていた点。
序盤から、普通の手を目指していなさそうだった高宮だが、点数状況的にも、高宮の雀風的にも仮にテンパイしたらリーチをかけてくる可能性が高い。
ダマテンでも一撃で松ヶ瀬を捲れる手が入ってるなら別だが、ドラの3sも3枚見えておりその可能性も低い。
そしてもう1つが、高宮との点差だ。
高宮と仲林は3,900点差。
もし高宮だノーテンだった場合、松ヶ瀬・萩原・仲林の3人がテンパイだとすると、テンパイ料で仲林は高宮を逆転するのだ。
仲林がではなくを切ったことにも、高宮をノーテンで終わらせたいという意図が込められている。
先述の通り、高宮はメンツ手ではなくトイツ手を目指していた可能性があり、を複数枚持っていると読めるので、のチーよりもをポンされる可能性が高いと読んでを切っている。
このに、ロンの声がかかることなく仲林はテンパイを入れることに成功。
高宮は最終手番でテンパイを入れることができず、終局が確定する。
パイレーツの3着逆転での終了かと思われたが…
萩原がハイテイで引いたのは3人に対して無筋の。
萩原からすれば、伏せても高宮にテンパイ料で逆転されることは無いし、当たらなそうとはいえ放銃の可能性がある牌を切るわけにはいかない。
萩原がハイテイでテンパイを崩したことで松ヶ瀬・仲林の2人テンパイで流局。仲林は2人テンパイでは高宮を逆転することができず、ラスのまま終局。
薄氷の3着をもぎ取ったかと思われたが、最後の最後でツモに恵まれず、悔しいラスとなった。
試合後のインタビューにて、仲林はオーラスについて話した。
「カンだったか…カンすれば萩原さんハイテイじゃなくなって切りやすくなってたな」
仲林が言っていたのは、ハイテイの1巡前、萩原が切ったを
暗刻だった仲林がダイミンカンできた、という話。
ダイミンカンをすると、ハイテイが萩原から松ヶ瀬に変わる。
松ヶ瀬は萩原よりも放銃を意識しなくていい立場のため、ハイテイで降りる可能性が下がり、結果仲林が3着で終われる確率が上がっていたとのこと。
そして、万が一リンシャンでをツモることがあれば、700-1300で高宮の逆転条件を満たすことができるのだ。
解説席でもまったく触れられていなかったし、正直見ていて思いつきもしなかった選択肢について語る仲林。
展開に恵まれず、試合に負けてもなお魅せる一局となった。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
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