想いのこもった2回の副露
それでも、私は黒沢咲
文・後藤哲冶【月曜担当ライター】2025年2月3日
黒沢咲といえば。
そう問われた時に多くの人はメンゼンでの超高打点を思い浮かべるのではないだろうか。
超メンゼン型麻雀。
その唯一性と独特な麻雀スタイルは、Mリーグ開始初年度から多くのファンのハートを射止めてきた。
しかし、その麻雀スタイルに、ここ数年陰りが見えてきていた。
爆発的な活躍を見せた2020シーズンを最後に、ポイントは減少。
プラスでシーズンを終えることすら難しくなり、ここ数年は全てトータルマイナス。
ここ数年はMリーグの環境も変わってきている。
メンバーの入れ替えによる、強力な選手の加入。もちろん副露も多彩に使ってくる。
徐々に、黒沢が後手に回されて苦しむ展開が増えてきた。
現在チームは5位。
レギュラー突破のためにも負けられない試合が続いている。
前回試合はチームメイトの本田が素晴らしいトップを持ち帰ってくれた。
その流れに、続けるか。
2月3日 第1試合
東家 瑞原明奈 (U-NEXT Pirates)
南家 伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘俱楽部)
西家 勝又健志 (EX風林火山)
北家 黒沢咲 (TEAM 雷電)
最初の配牌が配られた東1局、いきなり衝撃がやってきた。
西家に座る勝又の第1ツモは。テンパイだ。
発を切ればカンのテンパイ。ダブルリーチが打てる好配牌。
が、勝又はこれをほとんどノータイムでダマテンに構える。
考えてみれば分かる。カン2pと待ちが良くなく、ピンズ457を引けば形が変わる上、まだマンズやソーズの中張牌を引いてきての変化も見込める。
アガリやすい形になってのリーチタンヤオ赤赤ならば、ダブルリーチ赤赤よりも価値が高い。
何よりも凄いのは、この選択を勝又がノータイムでやっていることだ。
もともとテンパイしていたならまだしも、第1ツモでのテンパイなのにも関わらず、このリーチせずの選択をノータイムでできる打ち手は、そういないだろう。
しかし勝又の手はここからが長かった。
なかなか有効牌を引けず、もどかしい時間が続く。
その間隙を縫って、黒沢が着々と手を進めていた。
くっつきの選択は打を選択。
ドラがなので引きには期待したいが、そのは既に2枚見え。形の良いピンズと、マンズでのくっつきに期待する形。
狙い通りを引いて先制リーチは黒沢だった。
自身で2枚使っているリャンメンだが、ドラが1枚あれば十分。
このが、好配牌だった勝又から放たれる。
裏ドラを1枚乗せて5200。黒沢が幸先の良いスタートを切った。
東2局
先制リーチは瑞原から。を引き入れて待ちのリーチだ。
そこに追い付いた黒沢。当たり牌のを引き入れて待ち。
瑞原の先制リーチに通っているいわゆる現物待ちだが、ここは迷わずリーチの選択。
黒沢がメンゼン特化型の麻雀スタイルでここまで勝ってきた理由に、当然こうしたリーチ判断が優れているからという理由がある。
トップ目に立った今、3900の現物待ちはダマテンにしてしまう選択肢もあるが、序盤に恐れず大きなリードを取りに行くことの方が大事。