想いのこもった2回の副露 それでも、私は #黒沢咲【Mリーグ2024-25観戦記 2/3 第1試合】担当記者 #後藤哲冶

最後方から親番伊達も飛んできたが、めくり合いを制したのは黒沢。
瑞原から8000点の直撃で、更にリードを広げることに成功。
これを3900で済ませてしまうのと、8000点にするのでは大差だ。

選択がハマり、いくらか黒沢の表情にも気迫のようなものが感じられる。

更に親番でも加点に成功した黒沢がトップ目で東場を終える。
第1試合は南場に突入した。

しかし、ここから重たい展開が続く。
東4局1本場南1局2本場、どちらも流局で、南1局3本場へ。

こうなると、黒沢にとってもあまり良い展開とは言えなくなってくる。
この供託と本場を活かして満貫クラスをツモられると、一気にその差は縮まる。
安全圏とはとても言い難くなる点差。
特に、黒沢は軽いかわし手を不得手としている。
それこそピンフのみのような軽い手が入ってくれれば良いが、そう上手くはいかないだろう。

そんな南1局3本場
黒沢に与えられた第1ツモは……【中】
これで、役牌の【中】が重なった。
鳴きやすい【1マン】が対子のこの手牌は、【中】を鳴ければ速度が飛躍的に上昇する。
逆に言えば、【中】を鳴かないとテンパイすら難しい手牌、ともいえる。

そしてそのすぐ直後……伊達から切られる【中】
これを黒沢は。

「ポン」

鳴いた……!
形は、状況は、確かに鳴く一手だ。
けれどこれを、1年目の黒沢が鳴いたかどうかは、分からない。

Mリーグの環境が変わるにつれ、黒沢も麻雀を変化させている。
この日解説を務めた村上淳「悪い結果になって欲しくない」と言ったのが印象的だった。
黒沢は以前から、鳴いた結果、上手くいくことが無かったと語っている。
だからこそ、この鳴きに、良い感触を残して欲しい、とそう思うのだろう。

そんな村上の、そしてユニバースの想いが届いたのか。

「ツモ。700、1300は……1000、1600」

少しだけ時間がかかったその点数申告は、何故だがどこか愛おしく。
そして美しく見えるものだった。

南4局

南1局3本場での加点が大きく、黒沢は抜けたトップ目のままオーラスを迎えた。

そしてその配牌はかなり良い。
ドラも2枚あり、高打点が狙えそうだ。
幸い下との点差が離れており、放銃しての着ダウンの可能性がほとんどない。

「ポン」

再度、黒沢の声が発された。
なんとドラの【8ピン】の方でもない、【8ソウ】のポンからのテンパイ取り。
これも非常に良い選択のように見える。
現状ドラドラで5800の中打点であるし、【4マン】を引いてくれば三色の手変わりでの12000へ打点上昇もある。

そして何よりも

他家が圧倒的に攻めづらくなる。
特に2着目である瑞原はもう一切の危険牌を切らずに迂回した。
もちろん手牌価値が低いこともあるが、〝あの”黒沢咲の鳴きである、というのは大きかっただろう。
今回は、5800と超高打点でこそないが。

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