ビターすぎるバレンタイン──それでも高宮まりは攻め続ける──【Mリーグ2024-25観戦記 2/14 第1試合】担当記者 小林正和

そこに、字牌や愚形のパターンなども合わさると、放銃率はいわゆる“チリ”みたいなものである。

その思考は瞬く間に、高宮の脳裏にもよぎった。

したがって…

ほぼ3巡分の情報を得られる【8ソウ】打ちは、至極当然の選択だった。

リーチ・一発・ピンフ・赤・ドラ
8,000は8,300の放銃。

昭和から令和へと移り変わる中、バレンタインの文化も変化を遂げた。
かつて主流だった義理チョコの概念は次第に薄れ、代わりに推しチョコや感謝チョコといった、新たな形へと派生している。その中の一つである異性問わずに周囲の友達に渡す“友チョコ”。

まさか、たった数局の間に、竹内・大介に続き、本田朋広(トモヒロ)にも “トモ・チョコ” を渡す事になるとは、誰も予想しなかっただろう。

南2局─遠すぎるアガリ─

ビター度数:♥♥♥♥♥
ここまで展開が悪ければ、多少なりとも打牌にブレが生じてもおかしくない。
しかし、高宮は今できる最善手を選び続け、冷静に素点回復へと努めていた。

本田の仕掛けを受けながらもテンパイ。
【3ピン】【6ピン】【3ソウ】【6ソウ】の変則4メンチャン待ちである。

そして長い間、耐え続けた高宮。遂に報われる瞬間が訪れた。

レギュラーシーズン突破へ向け、大きな加点が必要なビーストXの大介。この局面において、親権を維持するために仕掛け、一牌勝負と【3ピン】を河に放ったのである。

高宮
「ロンっ!」

それは、ラス親に向けて嫌な流れを断ち切る、浮上の兆し。
ビーストXにあやかり、反撃の狼煙を上げるキッカケとなるはずだった。

ところが、その声は一瞬にして掻き消されたのである──。

本田
「ロン! 8,000。」

頭ハネ
ある打牌に対して2人以上の対局者から同時にロンアガリが宣言された時、放銃した人から見て次にツモる人にアガリの権利が与えられるというルール。

最後は麻雀のルールにまで泣かされた高宮であった。

終始、厳しい展開が続いた高宮。
それでも、攻める姿勢だけは決して崩さず、最後まで戦い抜いた。

たとえ今日の結末が苦くとも、その経験はきっと次の一戦を甘くするのだから。

このビターなバレンタインを乗り越え、高宮まりは、チームメイト・サポーターと共に、前を向いて歩き出す。

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