だからこそ仲林は、

この一見するとミスしやすい局面を「地味だけれどいい局」とも語っていたのだろう。
少し話は逸れるが、YouTubeでの仲林の検討配信は非常に要領を得ていてスピーディーだ。この試合も40分ほどで、ポイントを押さえながら振り返ってくれるので、重宝している。この場を借りてオススメしたい。
さて、続きを見ていこう。
仲林が次に持ってきたのは、

赤だ!
このツモもある。
そして、

流れるようにを重ねてテンパイ。
赤は出てしまうことになったが、

黒沢からをとらえて、リーチピンフ赤。5800の出アガリ。
最速のテンパイを組み、見事にアガりきった仲林の選択が光った一局だった。
ここで突き放した仲林は、このあとヒヤッとする場面もあったものの、

トップを獲得したのであった。
私は「地味な局に喜びを感じる」仲林を見て、Mリーグ2018-19、すなわちMリーグ初年度のある場面を思い出していた。
打ち手は、

今でもこの日のことは鮮明に覚えている。
レギュラーシーズン最終盤に、東4局で、

役満をアガった滝沢は、

勝利インタビューで、役満の話を聞かれている最中に、
滝沢「東1局が自分は好きで…」
と、全く別の局の話を始めたのである。
その東1局では、

滝沢「(茅森のリーチに、下家の)園田さんがバシッと押したのを見て、」

滝沢「の
を抜いたんですよね」
ここで共通安全牌をキープ出来たため、

2軒リーチになったとき、手詰まらずにが切れた、とのことだった。
どうだろう?
役満と比べて、めちゃくちゃ地味ではないだろうか??
ただ、

滝沢も、
そして今日の主役だった、

仲林も、何千何万と半荘を打って、運が良かった場面と不条理なシーンとを両方体験してきたからこそ、
「地味だけれど、自分の選択がしっかりと活きた場面」
に喜びを感じるのではないだろうか。
もちろん、派手な打撃系のスタイルも麻雀の「華」だ。

仲林を一気に抜き去ろうとした、この黒沢の四暗刻テンパイには、皆、胸がときめいたことだろう。
先ほど「仲林がヒヤッとする場面もあった」と書いたが、この場面のことであった。四暗刻は不発に終わったが、あとから対局を見たら「あぶな!」と思うことだろう。
この四暗刻手順は、取り立てて黒沢が「大きくいくわ!!」とダイナミックに進めたわけではない。それでも、各々が「勝ちたい」と思って戦いながら、要所要所で微妙に選択が違ってくるところが、麻雀の面白い部分でもある。
その中で、仲林圭は、たとえ1000回打牌選択があっても、盤面を凝視して、何が最善かを「デジタルに」すなわち「合理的に」考えることで、これからもきっと目指していくのだろう。

パーフェクトな1000打を。

京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite