(…ここだ。やるしかねぇ。)

「リーチ。」

河の左端を左手で押さえて宣言牌を小気味よく叩きつけた!
森山の専売特許を本人の前で繰り出す、掟破りのアトミックリーチ!

5年かかって待ち望んだ機会。
本人からは照れ笑いのような笑みが溢れるが、狙っていた一撃を成すことができた安堵の表情にも見える。
アトミックリーチを受けた森山はこの表情。

やや多めの瞬きに困惑している様子が見てとれる。
そして、次の瞬間にはこの表情。

「新津さん、おたくの若い子やるじゃない。」
と言ったか言わないかはさておき、リーチを受けた森山はそんな感じでなぜか楽しそう。
私も対局を眺めていてこんなに笑ったのはいつぶりだろうか。
浅井の勇気あるアトミックリーチに最大の賛辞を送りたい。
しかし、アトミックリーチを受けた先制の新津はたまったものではない。
親から高いことが分かりきっているリーチが飛んできたわけで、内心穏やかではいられないはずだ。
そして、さらに雲行きは怪しくなる。

前田にテンパイ。そして待ちは浅井と同じ。

出るか? 前代未聞の追っかけアトミックリーチ!
…とはならずも、前田はを挑戦状にして2人に叩きつけてみせた!
さあ、3人のめくり合い。
は山に2枚、対して
は1枚多い3枚残りだ。
5枚もあれば、決着はつく!

力なく河に置かれた。新津、アトミックリーチの前に敗れたり〜!
「ロン!」
カメラが浅井の表情を抜いた。

が、

次の瞬間、浅井の表情が歪む!

手が倒されたのは前田。
リーチタンヤオイーペーコードラの8,000点をアトミック頭ハネ!

淡々と点棒を回収する前田。そして、

渾身のアトミックリーチが目の前で不意に終わる浅井。
この鮮やかなコントラストこそ麻雀最強戦にふさわしい。
今シーズンの名勝負数え歌に挙げられる名局であった。
・アトミックリーチが打てない森山、そして。
自身の必殺技を先に仕掛けられた森山は黙っていなかった。
東4局、森山の親番。

最終盤にテンパイを入れた森山はサラリとリーチを放った。
ドラがないピンフリーチ。
本人的には打点的に物足りないことからアトミックリーチを打つには至らなかったのだが、

最後のツモで高めのを手元に。

さらに裏ドラ1枚を乗せて4,000オールに仕上げて3人を抜き去ると、

リーチツモウラ(裏ドラは)の2,600オールで風のように遥か彼方へ。
ダメ押しは、