一瞬の機微を逃さない、内川幸太郎の判断【Mリーグ2025-26 ファイナル 観戦記 5/12 第1試合】担当記者 中野巧

黒沢と内川と言えば、この「【西】」で内川が黒沢に放銃した四暗刻単騎が思い出される。そんな因縁ともいえる2人。


ほとんどそんなことはないが、「万が一国士無双だったら」と頭によぎったのだろうか。【東】を切るときの表情は険しい。

このとき、黒沢は国士無双の1シャンテン。欲しいのは【1ピン】【1ソウ】と先ほど内川が打った【東】

10巡目、黒沢国士無双の1シャンテン。もし内川からリーチが入っていたら早々に手を崩していたが、ヤミテンにしたからこそ、警戒をせず手を進められた。東4局で黒沢のヤミテンから内川の【東】バックのテンパイが入った局と、今度は立場が逆転した。国士無双が発生したら引き金は内川のヤミテンとなる。

親の伊達に【4ソウ】のポンが入り、黒沢が持ってきた【3ソウ】。ここで黒沢の手が一瞬止まった。国士無双テンパイなら本来は止まる必要がない牌だ。内川はこの刹那を見逃さなかった。

内川は持ってきた【1ソウ】空切りしてのリーチ。意図としてはこの瞬間テンパイをしていない黒沢の手を伊達・東城の仕掛けと、自身のリーチで止めようとしたのだ。

東城は黒沢から出た【6ソウ】をチーして【8マン】を切ればテンパイも内川に打ちきれず、通っている【4ピン】を切って迂回する。


その瞬間出る【6ピン】。ここで【8マン】を押していればトップ内川からの2000点直撃でオーラスを迎えられていた。東城はその後、形式テンパイを組むも危険牌を持ってきてオリに。

ここで伊達が【7ピン】をチーすれば形式テンパイで、親を連チャンできる場面で長考する。切り出す牌は【5マン】。内川には通っておらず、【5マン】周辺の牌が場に切られておらず、内川の手にあることを想像させる。解説の朝倉は「自分のスコアだけを考えたら絶対にチーした方がいいくらい」と、ラス目の親番を終わらせることはイコール、勝負をオリることだと説明した。

しかし、伊達は今日の負けは受け入れ、後の試合に託した。ここで無理をして、さらなる失点をするくらいなら、と我慢の選択をした。

結果は内川の一人テンパイ。内川のリーチによって、黒沢の国士無双はじめ3人の手を崩させた。

最後は内川に「ごほうび」とも受け取れる仕掛けができる手が入り、500.1000の一本場600.1100をツモ。

終局後、目を閉じながら結果をかみしめるように息を吐いた。

結果は、上位2チームをマイナスさせる最高の結果に。軍師勝又を差し置いて、先発で内川を起用する理由の1つに、サクラナイツ脱退から間をあけずに世界大会で優勝し、風林火山のメンバーとしてこのMリーグに復帰したスター性があるだろう。この試合は内川のスター性と機微を察知した勝負強さがいかんなく発揮された。
残り5試合、シャーレを掲げるのはどのチームか。

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