20年の沈黙を越えた卓で 瀬戸熊直樹は迷わず全部ぶつけた 【麻雀最強戦2026 団体分裂合戦】観戦記【B卓】文:うめきち

沢崎が「藤崎らしくない」と評したとおり、7700の動揺が尾を引いていたのだろう。東場でリーチを打たなかった代償が、じわじわ効いてくる。

 

崩れていく忍者の仮面

南1局、親の阿部がソーズのホンイツ模様で進めるなか、

ドラの【中】を暗刻で抱えていた河野がダマで【5ソウ】をツモ。

満貫のツモアガリである。親を流された阿部の表情が苦しい。

南2局、瀬戸熊はまたピンフのみで先制リーチ、待ちは【4マン】【7マン】。

親が落ちた阿部は押すしかない状況だったが、瀬戸熊のリーチの前に【7マン】を先に手放していたのが好判断で、

待ちを避けたまま追っかけリーチ。

同巡、テンパイしてリーチをした藤崎の【8マン】を捕らえて、

リーチ一発タンヤオの5200。

藤崎は東場の加点をすべて吐き出した。

放銃した藤崎の顔は、画面越しにも紅潮して見えた。

興奮か、怒りか、私にはわからない。ただ守りの名手が、らしくない麻雀に呑み込まれていくのは確かだった。

 

全部ぶつけるという勇気

南3局、トップ目の河野が【白】ポンで局を流しにかかる。

阿部がピンフでリーチを打つも、

次に引いたのは河野の当たり牌の【3ソウ】。

1000点で局は閉じた。

南4局、打点のいらない河野にドラの【7ピン】が3枚入る皮肉なツモ。

藤崎が最後のツモに懸けてリーチを打つも、

中盤からテンパイしていた【中】のみの瀬戸熊がハイテイでツモり、終局。

勝ち上がったのは河野と瀬戸熊である。

私は、瀬戸熊の勇気はここにあったと思う。二着以上で抜ける条件戦で、守り重視のスタイルの三人に囲まれながら、一人だけ先制なら愚直にリーチを打ち続けた。放銃の怖さを引き受けて、背負うものの重い卓で、いつもの自分を貫いたのだ。

試合後、その理由を本人が語った。

「沢崎さんと前原さんの両巨頭を倒さなきゃいけない立場になった時に、阿部さんの麻雀を参考にしていた。なのですごい感慨深くて、今日は全部ぶつけるつもりでやってました」

誘われなかった男が、去った人の麻雀を手本にしていた。そしてこの日は、その本人の前で全部ぶつけた。胸が締め付けられた。

藤崎は「【5マン】の放銃が痛かった」と振り返り、「20年近く前になりますけど、やり口が汚いのは一緒で久しぶりに味わった」と因縁を皮肉った。

阿部は「東場はまったく何もさせてもらえなかったのが最終的には響いちゃった感じで、僕の雀力ではどうしようもない感じだった」と悔しさをにじませ、

河野は「何もやらかさず初のファイナルに行きたい」と意気込んだ。

和解とは書かないかわりに

四人は座り方まで四者四様だった。背筋がピシッと伸びた瀬戸熊、

背が高くひょろっとやわらかい藤崎、

どっしりとして猫背の河野、

前のめりの阿部。

性格の表れかどうかは、私にはわからない。

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