20年の沈黙を越えた卓で
瀬戸熊直樹は迷わず全部ぶつけた
【B卓】担当記者:うめきち 2026年10月11日(日)
20年。団体を去った人間が、その相手と同じ卓に座れるようになるまでの時間である。
見られるはずのなかったメンツ
「こんなメンツ、見られない!」
画面を前に、私は思わずそうつぶやいた。
2006年、団体の大きなタイトルを獲っていた河野高志と阿部孝則が連盟を脱退し、麻雀機構(のちのRMU)を立ち上げた。連盟に残ったのが藤崎智と瀬戸熊直樹である。以来、この四人の同卓も、分裂をテーマにした対局も、ある意味タブーだった。
私見だが、Mリーグができて団体の対立構造が薄れ、各団体の関心が「優秀な人材をMリーグにどれだけ送るか」に移った。だから20年を経て、この卓が実現したのだと思う。
自分が打つわけでもないのに、私は開始前から妙な緊張を覚えていた。
礼だけで入場した四人
最強戦の入場では、おどけたポーズで笑わせにかかる選手もいる。それも好きだ。だがこの日の四人は、全員がお辞儀だけだった。
この対局の重い意味やそれぞれの背負うものがひしひしと感じられる。
なかでも瀬戸熊の表情に、私は引き込まれた。連盟の副会長。団体を背負っている気迫が、画面越しに伝わってくる。
しかも彼は、あの分裂のとき「絶対に鳳凰位を取りたい」と公言し、何があっても連盟をやめない覚悟でいた。その結果「瀬戸熊は誘わないでおこう」という空気があったと、本人が語っている。誘われなかった男が、20年後に去った二人と卓を囲む。解説席には、藤崎を説得して連盟に残らせた沢崎誠。役者が揃いすぎである。
忍者の手が震えた
藤崎は事前に「勝つか負けるかについては大きなことは言えないですけど、ただ必ず負けるとも思わないので5分5分だと思っています」と謙虚に語っていた。
だがこの男は「忍者」である。殺気を消し、ダマで仕留める。
東1局はピンフのみをダマにして、リーチなら一発だったツモをそっとアガる。
東2局2本場は四暗刻も見える手から
を軽快に鳴いて、
トイトイ5200を河野から。
東3局は親番で先制のタンヤオピンフをまたダマにして、
をツモって1300オール。
正直に言うと、私が学んだデジタル麻雀では、親の先制でこれをリーチしないのは見ない。しかしそこにはベテランの深い思考があるのだろう。三色への変化か、2着以上という条件か。条件戦ならではの判断だと私は受け取った。
ところが続く東3局1本場、配牌を取る藤崎の手が震えて見えた。
映像で何度も藤崎を見てきたが、こんな姿は初めてだ。百戦錬磨の忍者でも、この卓の20年は重いのか。
守りの卓でただ一人攻めた
東3局1本場、瀬戸熊が先制リーチを放つ。
ピンフだけの手でも迷わない。
一発でツモって、リーチ一発ツモピンフの1300・2600。藤崎がダマにした局の直後に、瀬戸熊は一発を拾った。守りの忍者と攻めの瀬戸熊。この対比がたまらない。
阿部の前傾姿勢も最高だった。
藤崎が場を温めたから、そろそろ俺も行くか。そう言いたげなファイティングポーズである。
東4局、瀬戸熊が
と
のシャンポンでリーチ。
親の河野は、瀬戸熊に通っていない無スジの
を押し、タンヤオドラドラをテンパイする。
それでもリーチはかけず、藤崎が通した
の現物待ちでダマに構えた。そこへ藤崎が、トイツから落としたもう一枚の
を…7700。
ロンの声に、藤崎は当たるとは思っていなかったというような表情を見せた。
続く1本場、藤崎は瀬戸熊の
待ちチートイツリーチに
飛び込んで3200。













