鈴木優、魔法を信じつづける先に【Mリーグ2026-27 観戦記 10/13 第2試合(麻雀ch)】担当記者 カイエ

「ロン、12000」

魔法のような、親のダマ満貫が決まった。
何度も訪れた分岐点の前で、己の判断を信じた。
その先に、希望が幽かに映った。

「策士、策に溺れる」

そう局後のインタビューで述懐した茅森だったが、幾度の誘惑に打ち勝ち、じっと気配を消して忍んでいた優の、執念の勝利だった。

神視点では、いったん役割を終えたとサービスセンターは休業すべきだったのではと言える。ありあまる端牌を切って様子を見、ピンズの中ごろを持ってきたら差しにいく。

しかし、いつ親リーチが来るかしれない状況で、可能な限り安牌は抱えておきたいし、少しでも可能性があるならば、今すぐにでも永井に差し込みたい。焦りともミスとも言えないこの心理が、優の卓越した「麻雀心理術」の前に利用されたかのようだった。

南4局1本場

前局の結末は、優の、執念の「勝利」だったと記した。

そして、こちらが優の配牌である。

勝った。

・・・否。

今期のサクラナイツの控室では「ヴァース」と「謙虚」がすっかり流行語だ。
後者を敷衍して、白い歯を見せる/見せないという諺も頻繁に用いられている。

「勝負は、勝ったと慢心した瞬間こそが最も危険だ」

古今東西の勝負師たちがこぞって警句とする、あの心得である。
白い歯を見せる=笑う=気が緩むというのは、決してあってはならない勝負事におけるタブーなのだ。

さ・す・が・に!
ご褒美のような配牌からの、2巡目にして赤を引いて赤を切ってのリーチ。12000点から。トップとの差は4300点。

さすがに、勝ったか。
思わず、歯を見せてしまいそうだ。

優の待ちである【4マン】–【7マン】は、前局と同じ。リーチ時、2山と多くはないが。

!

アガったのは、配牌から自風でドラの【北】を暗刻にしていた永井だった。
優のリーチに現物が尽き、中筋で通りそうな【4ソウ】を選んだ寿人からの、出あがり8000点。
勝負は決した。
永井は素点を回復しつつの大きな3着浮上。

あの好配牌では歯を見せなかったが、【赤5ピン】ツモからのリーチ時にはさすがに歯を見せたと検討配信で語り、笑わせた優。
しかし、ラスもありそうな展開からの2着奪取は最良と言えずとも悪くはない。
願わくば、瑞原の無念を晴らすトップを持ち帰りたかったが、まだまだ5分の1を消化したに過ぎない序盤戦。戦闘民族の、覚悟の闘争はこの先も続く。

1時間14分の全14局。
速く、バチバチのぶつかり合いの攻防を制したのは茅森早香。見事、今期2勝目をあげた。

※オーラスの親マン直撃の際、あたかも優が茅森に勝利したかのように記しましたが、大いなる間違いでした。歯を見せてしまいました。セガサミーフェニックス関係者の皆様、ウイングスの皆様、茅森早香様。心よりお詫びし、訂正いたします。誠にごめんなさい。

対局中は常にポーカーフェイスで、豊後無双の災厄の際にも表情が変わらないでお馴染みの「さや姉」だが、この日のインタビューでは珍しく表情豊か。
それだけこのトップは大きかったし、チームのために貴重なデイリーダブルを決められたことは、選手兼任監督としても何よりの功績だろう。

茅森監督が明かしたように、去るMリーグ2026-27シーズンのチーム初戦。
セガサミーフェニックスは醍醐→茅森のローテで、2着→1着のプラスを決めて幸先の良いスタートをきっていた。
その時の観戦記を書いたのも自分だったので、火曜日の第2試合は「相性はいいよね」って感じだろう。

今回は初戦以来となる「ねっとりω」コンビで、再び大きなプラスを積み上げてみせた。しばらくはこのカップリングで行こうかとは、監督の本心か陽動作戦か。

最後に、解説の前田直哉が「僕らは魔法を使える」とおもむろに話し出した。

誰かが用意してくれたご飯が毎日毎食、出てくること。
普段は当たり前のように思っていることが、実は当たり前ではないということ。
ふとそれに気づいた時、日頃の感謝を口に出して伝えれば。
あるいは会社でも、頑張っている部下がいれば「お前、がんばってるな」と一言、声を掛けるだけで、相手は「報われた」と感じたり「救われた」と思ったりするということ。

そうした「おいしいよ」や「ありがとう」や「がんばってるな」といった労いの言葉。

それは「魔法の言葉」なのだ。
だから僕たちは、いつだって魔法を使える。

ご存知の通り、麻雀は時に理不尽で残酷なゲームである。
今シーズンはまだ始まったばかりだが、すでに何度もそうした光景をわれわれは目の当たりにしているはずだ。

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