HIRO柴田の国士無双が、EARTH JETSを「チーム」にした夜【Mリーグ2026-27 観戦記 10/28 第1試合(麻雀ch)】担当記者 虫かご

大逆転劇への道筋が絶たれたように見えた矢先。柴田が静かにツモってきたのは、最後の【北】だった。

いま、この瞬間。緑色をした一筋の風が、ひゅうっと音を立ててMリーグスタジオを吹き抜けた。

もしかしたら、もしかするかもしれない。

ほどなくして、【1マン】もツモ。あの絶望的な配牌から、国士無双のテンパイまでこぎつけた。残る【9ピン】は、山に2枚。

すぐに元太が1枚回収したものの、大逆転の可能性が十分に残された柴田。

そんな中、ただ純粋に勝利を渇望して道を探る戦士が、まだ土俵に残っていた。

 

伊達朱里紗だ。

 

黒沢、元太のアガリに巻き込まれる形で3着目に交代した伊達だが、ハネ満のツモアガリでトップ目の元太を捉えることができる位置にいる。残りツモも少なくなってきたなかで【西】を重ね、チートイツのテンパイを入れた。

やや前のめりになって盤面をぐるりと見渡した伊達は、覚悟を決めたように、それでいて冷静に【3ピン】単騎でリーチをかけた。

すでに柴田の河には【9マン】が余っており、国士無双の気配は嫌でも感じているはず。そんなことは百も承知だ。それでも、リーチ棒とともに無防備な状態になってでも、勝ち取りたいものがあるのだ。

Mリーグの舞台に、2021-22シーズンから参戦した伊達。以降5シーズンでプラスの個人スコアを残している。参加した全シーズンでのプラススコアは、全てのMリーガーで彼女だけがなしている偉業だ。さらに、MVPを含めすべての個人タイトルを獲得。圧倒的な成績に、彼女自身を「麻雀」と形容する声さえあるほどだ。

個人3連続ラスからはじまった今シーズンも、気がつけばプラス域に復活している伊達。柴田が描く奇跡へのロードマップを打ち砕くには、これ以上の役者はいないだろう。

 

伊達の待ち牌も黒沢に流れ、互いに残り枚数が1枚ずつとなった終盤。伊達が最後のツモ牌へと手を伸ばす。

目の前の山から掘り出してしまったのは、全34種類の牌のなかでも、やけにざらりとした感触の、あいつ。

その瞬間、「麻雀」の右手がいくばくか震えたように見えた。

画面からあふれ出る、日吉さん、前田さんの絶叫とともに、その手は静かに【9ピン】を河へと並べる。

対面から聞こえてくる、柴田のすこしかすれた声。

 

「ロン」

 

伊達は、観念したかのようにそのアガリ形を見つめた。

もちろん、国士無双。

どんな小説家でも描けないようなクライマックス。役満・国士無双を決めた柴田が、4着目から一気に突き抜けてトップを獲得した。

もちろん、チームの楽屋は大騒ぎだ。

数々の激闘をくぐり抜けてきた一馬も「まじか?!」と半分信じられない様子。

柴田と同じく苦しい昨シーズンを送った三浦は「泣きそう」と涙ぐむ。

楽屋にはいなかった逢川も、Xで狂喜乱舞である。

 

ふと、この瞬間に、EARTH JETSという「チーム」がひとつ上のステージに上ったように見えた。

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