さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第14回】
ギャンブルの 攻略法はあるのか?
スポーツ新聞には競馬の必勝法の広告、パチンコ情報誌にはパチンコ攻略法会社の広告が載っています。
実際にそれらを購入して試したワケじゃありませんが、そのほとんどはマユツバものかもしれません。
特に競馬のほうは、本当に当たるなら、必勝法を売るよりも自分で馬券を買ったほうが、はるかに儲かる。
これは儲け話の信ぴょう性を見抜く基本の考え方です。
たとえば、マルチ販売組織やFX取り引きや、投機性の高い不動産取り引きなどがそれ。
一方、パチンコやパチスロは、ごくマレに本物の攻略法が開発されることがある。
かつてぼくが銀玉親方だったころは、本物の攻略法が3か月に1件くらい開発されていました。
当時、攻略法を一番数多く開発していたのが「パチンコ必勝ガイド」の攻略スタッフのクマちゃん。東京工業大学中退の若者(当時)でした。
「山崎さん、新しいこの台も前の台と同じ攻略法で連チャンしそうですよ」
立ち入り禁止の攻略室で、「どろぼう班」が盗んできた実機を作動させながら、自分の推理を話してくれました。
「前のとは別のメーカーですけど、CPUは同じZ80で、プログラム制作も同じ下請けだという情報があります」
「ほう」
「大当たりすると、2段階抽選のうち1段階目は自動的にパスすると思われます」
こうして開発された本物の攻略法の寿命は、当時でだいたい1か月でした。
パチスロ場合は、もっと短かった。
編集長の末井さんと深夜バーで飲んでいたら、数時間のうちに、攻略法発覚の電話が、全国から数件入ったことがある。
翌日の開店から数時間しか攻略のチャンスはないんです。
攻略法が発覚すると編集部は見事に空っぽ。
全員が、店から出入り禁止を言い渡されるまで、徹底的に攻略するのだ。
末井さんは、どろぼう班の班長かつ、出入り禁止部隊の隊長も兼ねておりました。
これらの攻略法は、とても寿命が短いけど、麻雀の場合は多少長くなります。
腕を磨いてカモを見つけて、さらに高レートに誘い込めば、高収入の可能性は高い。
ただしぼくの若いころの経験では、高レートで打てるのは、1グループで数か月。その繰り返しです。
雀ゴロがつきあってもらえるのは、たいして「太い客」じゃないし、美味しい賭場であればあるほど、簡単には出入りできないんです。
●賭場>カモ>腕、なのだ。
ビジネスの寿命も 意外と短い
「一流企業の寿命は30年」
かつてこんなふうに言われてましたが、その後どんどん平均寿命は短くなって、今では20年とも10年とも言われております。
一流企業(たぶん上場会社)ですらこの程度だとしたら、中小企業や零細企業は、ほんの数年じゃないでしょうか。
実際、ぼくの地元の高田馬場でも、表通りで数十年続いている店は10分の1もない。
駅前のパチンコ店、地元の信用金庫、不動産屋、お世話になった質屋など数えるほど。
都市銀行ですら、かつての行名で残っているのは一行もない。
同じ敷地の店舗で何回もテナントが変わっていることを考えれば、おそらく生き残り率は1%未満じゃないでしょうか。
古い知り合いが社長をしていたあるエステサロンは、数年前までは破竹の勢いの上場会社でした。
社長に美人専務を交えて、ぼくも時どき麻雀を打ってました。
「山崎さん、うちが開発した瀬戸内海の無人島リゾートに遊びにきてください。いつでも何人でも無料招待しますよ」
残念なことに、それからすぐに、負債数十億円で倒産してしまいまったんです。
一時は連絡すら取れなくて、友人たちが心配していたんですが、2人は債権者を逃れてこっそりと新たなエステを立ち上げていたんです。
「このまま野垂れ死になんて冗談じゃないわよ。あたしの青春はこのビジネスに捧げたんだから。必ず復活して見せる!」
女性専務はそう意気込んでたそうです。
このタフさは大事だし魅力的だと思います。
借金を踏み倒して新たな商売を始めるのは、一般的には不道徳かもしれません。
でも、また大きなビジネスに育てれば、借金も返せるし、雇用の創出など新たな社会貢献ができるかもしれないんです。
ぼくの勝手な推理ですが、この女性専務は、エステ以前にも挫折を経験してるんじゃないのかな。
●ビジネスだけでなく、ギャンブルなどの挫折からも、素早く立ち直るためにも、見習いたいものです。
人間の寿命のほうが 会社の寿命よりも長い
個人としての社長が死んでも、法人は社会的な組織として、生き延びられるように作られています。
ところが実際には、会社の平均寿命よりも、生身の人間のほうがはるかに寿命が長いんです。
労働寿命だけでも、40年から50年もあるので、現在所属している会社で一生働ける可能性は決して高くない。
つまり、いつでも転職できる能力を養っていかないと、いつか困ったことになるかもしれないと。
ぼくのように、フリーのギャンブル・ライターとか、零細な雀荘経営なんかだと、先行きはさらに不安だらけ。
ま、先のことはあまり心配してもしょうがないので、毎日せっせと働くだけ。
ぼくに限らず、とりあえず今の仕事をがんばってれば、必ずチャンスは訪れると思います。
どこかの国のことわざ。
●口を開けて待ってるだけでは、チャンスは掴めない。運が良くても一口だけだ。
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2010年12月15日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
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