灼熱のタキヒサ決戦
滝沢和典は冷静な判断と
強靱な意志で勝利を掴む
文・東川亮【月曜担当ライター】2021年4月19日
朝日新聞Mリーグ2020セミファイナルは、早くも中盤戦を迎える。
激戦必至の第2週、初戦のメンバー発表を見て心が沸き立ったファンは少なくないだろう。
今シーズンでは1/8以来となる、滝沢和典・佐々木寿人の「タキヒサ」対決。
しかし、今回は予告なしでの激突だ。
そしてあのときとは状況が全く違う。
滝沢のEX風林火山、寿人のKONAMI麻雀格闘倶楽部はともにセミファイナル敗退圏内の6位と5位。
チームのために、目の前のライバルを絶対になぎ倒さなければならない。
個人の思いとチームの事情、あらゆるものを背負った決戦が始まる。
4月19日 第1回戦
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
ライバルはいきなりぶつかった。
東1局、寿人が巧みに七対子を仕上げてドラ待ちのリーチ。
滝沢も十分形になっていたが、ここでは寿人の現物を切って目いっぱいにはしない。
こうしておくと、ドラを引いたときに使えるルートが残る。
裏目のを引いたとしても、自身の通した現物を切って粘れる構えだ。
そして待ちで高目三色、赤赤のテンパイ。
ヤミテンだと三色になるでしかアガれないが、が4枚切れのため、ここはヤミテンで静かに一撃をうかがう。
このとき、親の岡田も待ち平和テンパイを入れていた。
そこへ掴んだ、滝沢がリーチをしていたなら止められていたかもしれない。
滝沢の8000は、自身の加点のみならず寿人のチャンス手も潰す、価値あるアガリとなった。
次局は滝沢が萩原とのリーチ対決で同じ待ちを引き勝って3000-6000。
滝沢が序盤の展開をリードする。
東3局は親の寿人が先制。
6巡目、よどみないモーションでペン待ちリーチをかける。
滝沢はここから無スジのトイツを押した。
自身の手はホンイツ模様で、現物がない。
下手にスジを頼ったところで通る確証はなく、なにより手を崩せば残り巡目を逃げ回ることになる。
それならばと、まっすぐ自身のアガリを追った。
無スジを連打し、をチーしてまで押し、カン待ちテンパイ。
しかし、終盤で無スジのを押してまでは粘らなかった。
待ちのは少し前に寿人がを切ってスジとなっているが、周りからすれば滝沢が押しているのは明白なため、とてそうそう切られる牌ではない。
そこでさらに勝負をするのは分が悪いと踏んだか。
最後は寿人がツモ、裏を乗せて4000オールのアガリを決めたが、普段はあまり見られない、滝沢の強烈な押しが興味深い一局だった。
勢いに乗った寿人は次局もリーチツモタンヤオ平和ドラの4000は4100オールを決め、一気に滝沢を抜き去りトップ目へと突き抜ける。
タキヒサ対決の構図が鮮明となってきた一戦だが、麻雀は4人でやるゲームだ。
残る二人だって、脇役で終わるつもりは毛頭ない。