さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第15回】
ギャンブルに イカサマはつきもの
古来よりギャンブルにイカサマはつきもので、世界中で行われてきました。
ギャンブルの道具としては、サイコロの登場が早かったので、当然イカサマも早くから誕生していたようです。
昔の麻雀仲間のある年配の博徒は、一時イカサマの丁半賭博をシノギにしていたと話してくれました。
その博徒は、畳の盆の上のツボの中のサイコロを、床下から長い針を差し込んだり、電磁石を使って操作したと言います。
当時としては、かなりハイテクだったんでしょうね。
数年前のことですが、磁石とリモコンを使ったサイコロのイカサマグッズを、大阪商業大学の谷岡一郎学長にプレゼントされたことがあります。
サイコロはわりと小さめで、磁石で回転しやすいように、角が丸くなっており、見事に出目が操作できます。
●教訓。小さくて角が丸いサイコロには要注意。
透明なサイコロなら安心かというと、必ずしもそうではない。 赤くて大きい1の目は、実は磁石に反応するように、鉄粉を混入した赤い塗料を使っていることがあるのだ。
●中途半端な情報で安心すると、墓穴を掘る。
麻雀全自動卓でも できるイカサマ
麻雀も、かつて手積みのころはイカサマが横行していました。
たとえば自分の前のヤマに、有利な牌が来るように積み込むとか。
練習すれば形だけは誰でもできますが、それだけではダメ。
ヤマを取りだす位置を決める、サイコロの出目も操れなくてはいけないんです。
一般的にはトイメンから取り出す7の目に合わせて仕込む。
サイコロの組み合わせ上、7が一番出やすいとはいえ、確実に出るとは限らないし、失敗すると、麻雀の構造上そっくりトイメンに入ってしまう。
それを防ぐために、「置きザイ」や「滑りザイ」で、強引に目を出してしまうのだ。
それにも失敗してトイメンに入りそうな時は、配牌中やツモの途中で、自分のヤマを調整しなくてはならない。
つまり、状況に合わせたいくつかの技術の組み合わせが必要なんです。
当時は暗黙の了解のようなところもありました。
●やられるヤツが間抜け。
●やられたら、やり返せ。
その当時はイカサマ麻雀で食ってるプロもたくさんいましたが、現在ではほとんどいない。
ずいぶん前、小島武夫プロがマスコミにデビューしたばかりのころ、テレビでイカサマの手口を暴いたからです。
さらに影響が大きかったのが、全自動卓の登場。
では、完全に無くなったかというと、そうでもない。
全自動卓になった今でも、
●拾いと通しはできる。
というのがキャリアのある雀士の常識なのだ。
拾いというのは、文字通り捨ててある牌を拾って、手作りに生かすこと。
ただし、今からこれをマスターしようと思っても、費用対効果は著しく悪い。
みんなの目の前にある牌を拾って、さらに自分の不要な牌を捨てるんなんて無謀。
なので、今でもこれをやっているのはかなり年配の人で、元もと各種のイカサマの経験がある人が多い。
拾いだけでなく、同時に余分な牌を持ってくる3牌ツモや、余分な牌の握り込みができる人たちです。
ぼくが経営しているフリー雀荘「たぬ」にも、それらしい年配のお客さんが来たことがあります。
不正に余分な牌を握り込んで有利に手作りをし、アガった時は、余分な牌を全自動卓の中に素早く捨ててしまいます。
ところが「たぬ」で使っている全自動配牌卓は、卓上のヤマが従来のタイプよりも短いので、そこから牌を握り込むと、さらに短くなってバレやすいんです。
おそらく、余分な牌をヤマに戻して長さを調整する技術まではなかったんでしょう。
その人には、ぼくが少し話しをしてお断りしました。
対人ゲームでのイカサマは、バレそうになった時や、バレた時の対応策も重要。
バレてもその場を言い逃れできるだけの話術とかずうずうしさとかね。
もうひとつの通しは、お互いにサインさえ決めれば、指先の技術などの修練はあまり積まなくてもできます。
パターンは主に2つで、一つは卓外から打ち手に必要な情報を通すやり方。
もう一つは、同じ卓内で組んで情報をやり取りする方法です。
卓外からの場合は、見学者を装って相手の待ち牌などの情報を通すのが一般的。
ごく稀に、フリー雀荘の従業員とお客さんが組むこともあります。
昔のことですが、雀荘で働く自分の女に、ステンレス製の丸いトレー(お盆)を持たせて、他の客の手牌を映すイカサマもありました。
2人組で通しをやろうという雀士は、昔も今もいます。
「たぬ」にも怪しい振る舞いの男女が来たことがあります。
初めて見る同卓希望の若いカップルは、お互いに甘い牌を鳴かせあったりしてるように見えました。
オーラスに、男性のほうがトップ目で2着目は僅差で女性。
そこに3着目からリーチ。
逆転を回避するために、トップの男性から2着目の女性に、わざと振り込むように指示が出たようです。
この時女性が不満げだったのは、自分もトップのチャンスがあったからみたい。
渋々女性が男性に振り込んで、作戦は成功したかに見えました。 ところが男性のアガリが大きすぎて、女性は最下位の4着に転落してしまったんです。
これでは片方がせっかくトップを取っても、2人合計ではあまり美味しくない。
その後2人は無言のケンカ状態になったらしく、すべての作戦が裏目に出て、ボロボロになっておりました。
●簡単にできるものは、簡単には儲からない。
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2011年1月1日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
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