すげぇ!!!
神がかけた天秤は、ものの見事に傾いた。
11巡目ついにテンパイが入る。
たろう、いけーーーーーーーーーー
しかし、神の所業はこれにとどまらなかった。
え???ダマ???
ここは盤面をみてみよう。
直前に上家の多井がを切っている。たろうのトップ条件は、満貫以上のツモか、瀬戸熊からの5200以上直撃だ。
瀬戸熊は、前巡の打をみてもまだベタオリはしてないようだ。ド終盤に完全安全牌を確保するために、いま通ったを数巡の間に切ってくる可能性がある。もちろんダマのツモでもたろうはトップになれる。
たろうはあえてリーチしないことで、瀬戸熊からこぼれるのを期待した。
たろうの思惑通り、瀬戸熊はまだ中張牌を切っている。頼む……。
しかし、手の内から安全牌の発を打ってきた。これは、もう先に危険牌を処理出来て、残り数巡の安全牌が足りた、という風に読める。
となると、ゼウスの選択はただ一つ。
を空切りして、リーチ宣言だ。直撃が期待できないのなら、一発や裏ドラに賭けた方がいい。
しかし、このメンツ、そうそう楽はさせてくれない。
ソウズの下に狙いを絞っていた多井、狙い通りを重ねて12000確定のリーチ。もしたろうが放銃して裏が乗ってしまった場合、16000を打ったたろうは3着に落ちてしまう。
お願いだ…神様…これをアガれればきっと…僕も…たろうと一緒に救われる気がするんだ…。
祈りは果たして天に通じた。
ブルッ
思わず身震いした僕の傍らにある、スマホが震えた。
「あー、もしもしー。ごめん、カラオケ来てて着信気づかなかったー。歌ったらだいぶスカッとしたし、一人じゃつまんないからあと1曲歌ったら帰るね。え?大切にする?はいはい。ありがと。麻雀ばっかりじゃなくて、たまには私にも愛をちょうだいよね。やっぱ△△くんは怒られないとわかんないかー、反省しなさいっ!」
良かった…。泣きじゃくっていて気の利いた言葉が浮かばなかった僕は、何歌うん?って聞いた。
「え?言ってもわからないかもしれないけれど、あいみょんって歌手の、貴方解剖純愛歌。今年紅白出るんだよ、すごいよね…って聞いてる?」
こんなどうしようもない麻雀狂いの僕を、おぞましいくらいに愛してくれて、ありがとう。
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