続く一本場。そんな黒沢の配牌。
うまく678の三色になればいいな…という手。
2巡で、と重ねて一気に勝負手に。
ダブはさすがにポンして
ここからなんとを切った。「ドラが重なると思った」とは黒沢の弁だが、何を言っているか庶民の私にはわからない(笑)普通に打だろう。をツモってもをツモっても5800のテンパイで、
例えドラのをツモってきてもなんら困らない。
「絶対にマンガンにしたいのでしょうね。おもしろーい」
解説の村上プロも、おもしろーいの部分が棒読みで、呆れていることがわかる。
このをチーしてイーシャンテン。結局5800のイーシャンテンなのだが…
当然のようにドラを引く黒沢。そして
さらにドラを引く。
ついでにもツモってきた(笑)この局だけだったら何とも思わないが、こういう場面を本当によく見かける気はする。今一度上にスクロールしてもらって黒沢の配牌を確認ほしい、あれがここまで育つのだ。
「Mリーグでの彼女の戦いぶりを見ていただければ~(中略)~マジメな麻雀の話であることがお分かりいただけると信じている」
(麻雀プロMリーグ名鑑より抜粋)
ここはさすがにをツモ切って(それでもタンキに受けようか少し考えていた(笑))この手に飛び込んだのが勝又だった。
この手牌からを抜いて放銃。他に通っている牌はなく、これは仕方ない。
と、いうのも、このは「理論上ほぼ通る牌」なのである。
黒沢は→と手出しした後に、
をでチー。ターツ落としが入った後に食い延ばすケースは少ない。あるとしたらマンズのホンイツに向かったケースだが、
その後やを手出していることからドラ周りのソウズターツを持っていることがわかる。
つまりホンイツではなく、は絶対通るのだ。
ただし「相手が理論的に打っているのなら」という条件が付く。
勝又(どういう手順でこの待ちがあるんだ…?)
黒沢(12000で‘‘妥協‘‘よ…)
と、思ったかどうかはわからないが、理詰めの打ち手が常識外の打ち手に絡めとられる瞬間を見た。
黒沢がアタマ二つほど抜けたあとの南二局。
小林は
このテンパイを打ダマに構えた。
親の松本が3フーロしていたからだ。が現物。リーチしてアガることによる着順上昇よりも、ラス率上昇を重く見たのだろう。これが2フーロだったらリーチしていたと思う。3フーロだからこそ、ほぼテンパイだし、
周りもそう思うためにを切る確率は高く、テンパイだからこそめくり合いで負けるケースも増える。
また、このままでもをツモればマンガンだし、三暗刻変化もある。
結果は
黒沢から2600のアガリ。これまで一度もラスを引いていない小林らしい選択だと思った。
一回戦はこのまま黒沢が逃げ切り。
(黒沢+59.1 松本+5.3 小林-19.2 勝又-45.2)
二回戦、パイレーツは小林を連続投入する。注目してみていたが、いいところがなく、とうとう初めてのラスを引いてしまった。
Mリーグ名鑑で小林のプロフィールを確認すると、おススメの麻雀書籍の欄に「リーチ麻雀論改革派(著・天野晴夫)」と書いてあった。この本は1990年に刊行された昔の本だが「流れ」や「勢い」が当たり前に存在していた麻雀界に、はじめて「デジタル」の概念を打ち出した本である。
実は私も感銘を受けた一人だからよく覚えている。この本に牌姿はあまり出てこない。麻雀強くなりたければ、まずは己にうち克つ心、「克己心」を鍛えるべきだと著者は説く。
アガって嬉しいって思う心に対し、落ち着けバカ…と言い聞かせる。
放銃して落ち込む心に対し、気にすんなボケ…と言い聞かせる。
これを続けていくうちに自然と「知」が「心」を説得しだすようになる。すると「心」が揺れることは無くなり、どのような状況でも冷静に「知」で判断できるようになるというのだ。
私もこの本に書いてあることを実践しようとした。しかし、しばらくしたところで怖くなり、やめた。人間の感情の部分が失われていくような、言いようのない恐怖を感じてしまったのだ。