松本吉弘の我慢がいつか実を結び 果てない波がちゃんと止まる日が来るのか?【熱論!Mリーグ】担当記者:ZERO

熱論!Mリーグ【Tue】

松本吉弘の我慢が

いつか実を結び

果てない波がちゃんと

止まる日が来るのか?

文・ZERO【火曜担当ライター】2019年12月3

本日、東京は六本木にて、パブリックビューングの拡大版、プレミアムナイトが開催されていた。

その価格は8500円と決して安くはなく、ましてやド平日である。それにも関わらず、用意した900席はあっという間に予約で埋まってしまったと聞く。

900人だよ?900人!

昨年のPVが100人前後、豪華だった今年の開幕戦ですら300人だったことを考えると、「見る雀」(麻雀を見て楽しむ層)というジャンルが世の中に確実に広がっている証拠だと思う。

またアベマの広告がメインの収入だったMリーグに、新たな収入の可能性が見えてきたと言えるのではないだろうか。

1つの卓を1000人近いファンが集って応援する…数年前まで麻雀界にこんな未来は想像できなかった。そして、その舞台で戦うことができる選手はどれだけ打ち手冥利に尽きるのだろう。

さて、プレミアムな夜にふさわしい豪華なメンツが揃った。

1回戦

東家 鈴木たろう赤坂ドリブンズ

南家 多井隆晴渋谷ABEMAS

西家 瀬戸熊直樹TEAM雷電

北家 勝又健志EX風林火山

各チームのエース級が登場。どう転んでもアツい対局になりそうだ。

観戦記の前に、Mリーグというフィールドの特徴を解説したいと思う。

Mリーグ全体のフーロ率は20%前後である。

これは我々が普段打つ麻雀と比較して、かなり低いと言える。

例えば私が打つオンライン麻雀「天鳳」を例にすると、ほとんどの打ち手がフーロ率30~40%の範囲に収まり、30%を切ると「メンゼン派」と言われる。巷のフリー雀荘も同程度だろう。

Mリーグの方が圧倒的にフーロ率は低い。この差が何を生むかと言うと、仕掛けへの信頼度へ差が生まれるのだ。

他のフィールドだと1つ仕掛けても何も起こらないか、むしろ被せるように切ってくる。しかしMリーグだと仕掛けに信頼感があるだけに対応されがちで、なかなか2つ目が鳴けない。そして本手の人が追いつく。そういう環境ではますます仕掛けることが損になりがちだと言える。

例えばこれは本日の勝又の手牌。

この役牌が2つトイツある手牌で、対面のをスルーしている。

フーロ率35%のフィールドならポンポンしてトイトイを狙うのが正解かもしれない。しかしフーロ率20%のフィールドでは、決して鳴くことが早くなる、とは限らないのだ。

どちらが良い、悪い、という問題ではなく、フィールドによって最適解は変わる、ということ。

これらの前知識を踏まえると、東2局が面白かった。

親番の多井の配牌はかなり苦しい。

役牌のがトイツだが、他はあまりにバラバラである。

しかし、ここで多井は仕掛けたのだ。

ペンチー。これはフーロ率の低いフィールドと多井というブランドを利用した、半ばブラフ気味の仕掛けである。そしてここで切ったのが…

だ。123の三色は見切り、役牌を抱える。こうしておくことで切りづらくなる牌の範囲が広がるのだ。

例えば、他家から見てみよう。

勝又の手牌。もともと苦しい手牌だが、それだけにこんな手からなどを切るわけにいかず、実質的にギブアップだ。

一番やりづらいのが上家のたろうだろう。

をツモってきた場面。たろうは1打目にを切っているのでは不要牌だが、のあとにをチーした多井に対して三色があって、さすがに切りづらい。もちろんを切るほどの手牌でもない。

(多井さん、それ本当に手ぇ入ってるんすか?)

(知らねぇよ)

首を捻るたろうに、多井がそう答えているようだ。

結局、しぶしぶ…と言った感じでたろうはを抜いた。

こうして多井の仕掛けは完全に場を支配した。重いフィールドだからこそ使える牽制と言えるだろう。

「それなら悪い手のときになんでも仕掛けて相手を降ろせばいいじゃん!」

という、とてもうまくいきそうな作戦が思いつくが、それは所詮「ぼくのかんがえたえむりーぐのかちかた」であり、机上の空論である。ブラフで降ろすことができるのは、中途半端な手牌だけだ。本来、安く決着していたであろう場面で、自分のブラフ仕掛けによってその安手を降ろしてしまい、本手の親に高い手をツモられる…なんて展開になると最悪だしそうなりがちなのだ。

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