熱論!Mリーグ【Mon】
部屋とMリーグと
ヒサトと私たち
~この、あふれ出る熱狂を~
文・ゆうせー【月曜担当ライター】2019年11月11日
(前回までのあらすじ)
ゼウスそっくりの青年たろうは麻雀に熱中するあまり、彼女である小林桃(白鳥翔ファン)と別れてしまう。そして1年の月日が流れた…。
僕のあだ名は、たろう。麻雀と鈴木たろうが大好きな男だ。
もう一つ、僕には大好きなもの、いや、大好きな人がいた。
けれど、もうそばには、いない。
ーあなたの両腕を切り落としてー
あいつが好きだったあいみょんの歌を聴くたびに、思い出してしまう。今頃何をしてるんだろうなと、なんにもならないことを考える。何度もこの曲が聴きたくなるのは、すっかり自分がハマったからだけではなく、あいつの記憶を蘇らせたいから。
そして、そんなみじめな自分に酔いしれたいから。
あいみょんは、あれよあれよと言う間に国民的歌姫になった。でも、自分はどうだ?
過ぎ去った恋を引きずって、一歩も前に進めずにいる。本当にダサい。オリ打ちよりダサい。
「でも、じゃあ、どうすればいいんだよ…!?」
とっくに日が落ちてしまった自分の部屋で、声にならない叫びをあげた。
気づけばこんな時間か。今日は月曜日、Mリーグの日だ。音楽を止めて、アベマTVを起動する。
本日1戦目には寿人が出てくる。
まさかの個人最下位にあえぐ寿人。でも、寿人の力はこんなもんじゃない。
落ちに落ちた自分が、不調の寿人に重なって見える。
「頑張れ、寿人。」
モニターの前で想いがつぶやきとなって、こぼれ落ちた。
これは、11月11日(月)のMリーグの試合にまつわる、とある男女の物語。
1戦目
東1局
「やっぱり寿人、調子悪そうだな…」
僕がそう感じたのはこのシーンだ。
ドラに、ドラ表示牌がジョイントする、手応えのあるツモ。ここで寿人は、
打とした。狙いはピンフと234の三色に定めて、
++++の5ブロックに固定。安全牌を持つスペースを確保した形だ。
他家が役牌から切り出して素直な手牌進行をしていることからの守備的選択だけれど、を払うのがワンテンポ早かったんじゃないだろうか。
とのシャンポン受けも消えてしまうし、ほかにも、
このようななどのマンズの伸びも嬉しくなくなってしまう。
周りが真っすぐすすめているとはいえ、まだ真ん中の牌を誰も余らせていない状況のここは、打として、
と構えて、あたりを引いたら、そこで打として5ブロック。
を引いたら、を払ってこちらも次に一手進んだタイミングで5ブロックに構えるのがいいのではないかと思う。
このあとイーペーコーが出来るが、アタマが無い。嬉しさと悲しさが同居する手牌になってしまった。
追い打ちをかけるように内川からリーチがかかって、寿人にもテンパイが入るが…
単騎待ち。これは、まだぶつけることができない。
けれども、寿人のいいところはひたむきに前だけを向いて戦うところだ。そのままテンパイをキープし続けた寿人の残りツモはあと2回。引いたのは…
…
「きっつ!この二択きっつ!!」
心が折れてしまいそうなこの場面。だが、寿人は屈しない。
を安全牌のようにスッと河に並べる。
「すげー!よく通したよなー!やべーやべーー!!」
興奮する僕。
そんな僕と違って、寿人の表情はクールだ。内に秘めた気持ちはこの上なくホットなのに、ポーカーフェイスなのがかっこいい。