最後はカンに待ちを変え、寿人はテンパイ料をもぎとっていく。
そうだよな。後悔しても時間が巻き戻ることなんて絶対にないんだ。麻雀も恋愛も逆流しない。僕もしっかり前を向いて生きていかないとな。
僕は両手で太ももをパンと叩いて、再びモニターに見入っていった。
東3局1本場
この局は、寿人の名物となってきた、バリバリの変則手に見える河でのチートイツリーチがかかる。
見え見えと言われようが気にしない。ストレートな狙いで直球勝負を挑む寿人。
これはこれで同卓者も嫌なものだ。
松本は、
が、
内川は、
が、
そして亜樹も、
が打ち切れない。狙いが手に取るように分かるからこそ、打ち切れずに回らされるケースも多いのだ。
「やっぱり寿人の直球勝負は迫力あるし、見てて気持ちいいよなー!野球でたとえると藤川球児みたいだよなー!!」
そういえば、あいつと一緒にMリーグを見てるときにもよく野球でたとえて、
『もう!わたし野球わかんないんだってばー!』
っていつも文句言われてたな。もっとマリオカートとか、別のたとえにすればよかったな。
やっぱり、どうしても思い出してしまう。自分に嘘はつけない。
僕はまだあいつのことが好きだ。
僕も勝負しないと。なにか、なにかきっかけはないか…。
僕が腕組みをして考え事をしている間に、寿人のチートイツは3人をおろし、流局していた。
南1局
私の名前は小林桃。麻雀と白鳥翔が大好きな女の子。
三度の飯より麻雀が好きだった彼氏と別れて1年が経った。女友達からは、
「え?別れたの?そうなんだー。やっぱり麻雀してるオトコとかダメよねー。次いこっ次」
って散々言われた。ていうか、そんなこと麻雀してる私に言う?
そもそもあなたは麻雀のことも、麻雀している人のことも、なんにも知らないくせに。
いけない。Mリーグを見てるとつい、たろう君のことを思い出しちゃう。試合に集中しなきゃ。
今日は寿人さんに注目して見ているんだけれど、ちょっとまだ本調子じゃない気がする。
をポンしてホンイツに向かった寿人さんの6巡目、
2枚パパッと切られたが重なった。ここで寿人さんは、
を切った。は無いけれど、はまだ2枚残っている。の伸びも見つつ、のポンに賭けた一打。
ただ、特に最終形として残ったときに、片方が枯れていて片方がション牌というシャンポンがネックになることは間違いない。
一方ここでを切ると、
でテンパイするだけじゃなく、
引きでさらにいい形に変化する。
例
また、裏目のが出たとしても、鳴くと、、
となって、でテンパイする広い形になり、十分リカバーが可能だ。ここはを切るのがよかったんじゃないかな。
ちなみにを切らないのなら、の方を払ってチャンタもつけ、8000にするコースもある。
次巡のツモは、
だった。そのまま力なく河に並んでしまう。
寿人さんもなんだか悲しそう…。
それでも寿人さんは、
この形でテンパイを入れる。