全員の手をクラッシュさせ、一人旅は成功した。
ツモれなかったが、十分だ。
うん、さっきと比べて断然頭はクリアだ。展開も悪くない。イケる。
その手応えを確信したのは次の局だった。
ファインプレーが出た。
自分でファインプレーと言う人を見たことがないが、私は自分への称賛は惜しまないタイプだ。

松ヶ瀬プロのリーチにベタオリしているときに大きく頷く私。(ウザい)
牌図を見てみよう。

(怒りの自力作成・点棒は原点)
この場面。私は通ったばかりのを温存して、
を切り飛ばした。
は一応中筋だが、通ってはいない。
通常、このようにくるかどうかもわからない追っかけリーチに備えて通っていない牌を切るのは悪手になりやすい。
しかし今回は複数の条件が揃った。
まず、親の井出プロがリーチに対して
・
・
と押していること。
そして南家の大和プロも役牌からの切り出しで、リーチの一発目にを切っている。
は私の手牌を見ると、大和プロからワンチャンスにもなり得ない牌であり、明確に押していると言える。
そしてリーチに対して、は直前の
切りにより、カン
も
シャボもほとんどない。
ここまで条件が揃うと先にわずかなリスクを背負ってでも、安全牌を持っておいたほうがよさそうだ。
を切った直後に…

2軒リーチが入る。うんうんとウザい頷きがますます大きくなり、元気よくを切り出す私。
解説の坂本大志最高位も大絶賛してくれた。
「うちの若手に見習わせたい!」
「3軒リーチとなると、1巡凌げばどんどん開拓されていって手詰まることもなかなかないですから!」
………


手詰まった。(´・ω・`)

ここで考えたのは、なんでもありそうな先制リーチの松ヶ瀬プロ、同じく何でもありそうな親の井出プロのリーチよりも、その2軒に対して追っかけた大和プロのリーチにだけは振り込んではいけないことである。人読みも含めて、大和プロのリーチは限りなく本手(打点や待ちが伴っている)だろう。
そこで大和プロに1番通りそうなを切った。

松ヶ瀬プロにドッスンバリバリ(ロン)
2600で済んだのが不幸中の幸いか。
坂本「ほ、放銃に終わりましたが、素晴らしい判断でしたねっ!」
最高位の優しさが身に染みる。
この後、そこそこ戦えそうになった局もあったが、あと1牌が届かず、もどかしい展開が続き、結局オーラスまできてしまった。

倍ツモ条件の私は、この配牌からジュンチャン・チートイ・チンイツに絞ってを打ち出した。かなり苦しい。

ドラが重なってが暗刻になって少しだけ逆転のルートが見えてきた。三暗刻とチートイは逃さないように打っていく。
松ヶ瀬プロも井出プロもマンツモ条件であり、私から見逃すケースが多いので安全牌を持つ意味は薄いと推測し、場に出た牌を丁寧に合わせていく。

3段目に入ったところでここまできた。ここで下家の松ヶ瀬プロに危険なを先に処理するか迷ったが、やはり松ヶ瀬プロは自分からアガれない公算が高い。そして何より南家にはプレミアな1巡がある。年に一度、ハイテイと一発が複合する日…。
リーチ・一発・ツモ・ハイテイ・ドラ2・裏裏
トイツが多いこの手牌なら裏ドラが複数乗ることも夢物語ではない。ツモときたら、その一撃に全てを賭けるつもりで、
を残した。
しかし、ここから3巡全くテンパイしない。
次にテンパイしなければ、もうリーチはかけられない。
運命のツモ山に手を伸ばす…

テンパった!あとはリーチして天命に身を委ねるだけだ。
り…
り…
ぐっ
リーチの声が出ない。
これがもう最後の思考となった今、ずっと奥で潜んでいた感情がどっと押し寄せてきたのだ。口を開くとその感情が一気に溢れ出してきそうだった。
