熱論!Mリーグ【Mon】
「麻雀」というゲームとは…
プロセスだけでは読めない
内川幸太郎の逆転劇
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2019年12月9日
遠山「この前教授が言ってた広瀬章人竜王が新聞に出てるね。あー竜王取られちゃったんだ」
藤井「中盤は広瀬竜王が優勢だったのですが、最終盤の詰む詰まないの変化で1歩足りないなど、挑戦者の豊島将之名人がギリギリのところで勝ちになっていたようです。最終盤の先手玉の攻防は2019年の名局ともいえる内容といって差し支えないでしょう。見ごたえのある逆転劇でした」
遠山「振り切ったねえ」
藤井「振り切りました」
観戦していていちばん盛り上がるのは「逆転」したときではないかと思う。だからこそ観戦者は半ばそれを期待している節がある。例えばサッカーでは2-0は危険なスコアと言われ、逆転が起こりやすい。勝っている側が守りに入るのと、負けている側が追い込むので、試合のバランスが崩れやすいのが一因だ。これが2-1になると、勝っている側にスコア以上の危機感が生まれ、逆転のムードが漂い、観戦者は湧き立つ。
麻雀における危険なスコアは何点なのだろうか。Мリーグも時に大きな逆転劇が起こる。
南2局一本場を見ていた筆者はフェニックス・茅森早香とドリブンズ園田賢のどっちがトップを取るかに注目していた。だが、それが甘い見立てであったことを後に痛感する。
順番が前後してしまった。今回は2戦目の模様をお送りする。序盤は平穏な立ち上がり。東三局二本場まで目立った動きはない。この局でそれぞれ手の入った4者が供託3本を狙いにいった。
をポンしたのは茅森。ドラとが心強く、3900点の手になっている。アガれば子の満貫級なので大きい。
そのを明け渡したのは園田だったのだが、自身の手がいいので目いっぱいに構えたのだ。むしろここまでを残していたのは、早々に鳴かれたくなかったのだろうと推察する。
パイレーツ・朝倉康心も参戦。カン待ちのテンパイを入れる。すでに待ちで構えていた茅森に追いついた。直近で海底から這い上がり不調を脱した朝倉。勢いは続くのか。
サクラナイツ・内川幸太郎もひっそりと待ちのダマテン。供託を取りたい気持ちは全員同じ。序盤の勝負どころを迎えた。
この勝負に勝ったのは茅森だった。1000-2000に加えて3600点の副収入で、合計7600点をゲット。茅森がリードを奪う。
南一局。を引いた園田、これをツモ切り。を切ればとのシャンポン待ちだったが、これを分が悪いと見た。それよりもにくっつけるほうが嬉しい。
狙い通りを引いて待ちの形に。先制リーチで茅森を追いかける。
朝倉もを鳴いており、1000点の手ではあるがテンパイが入る。今打ち出されたは通っていないが、迷った様子はなかった。
押している朝倉にリーチの園田。これを見て手が止まるのはトップにいる親の茅森だ。を切ればテンパイだが、2人に通っていない。そして待ちもカンと良くない。
ここは少考。筆者なら通りそうな牌を求め、河をキョロキョロ見てしまいそうだが、茅森の視線は下を向いていた。
茅森の選択は打切ってダマ。トップ目ながら強気な選択だ。この押しは推測だが、2人と自身との点差がまだ「危険なスコア」であると見ていたのだと思う。ここで守りに入るのは逆に危ないと。
結果は無言の圧力で攻めた茅森が勝った。2000オールで大きな加点。リーチをかけなかったのはギリギリの守りも視野に入れてか。解説の土田浩翔プロは「バランサー」と評した。
土田プロといえばこの日も土田節が冴え渡っていた。
「これ茅森トップ、園田2着で終わればいいのかなって感じはありますけどね」(土田プロ)
「誰にとっていいのかな(笑)。あれですね、7位8位のチームに-200ポイントを脱してほしいっていう」(実況・小林アナ)
「園田がこの辺で満貫ツモって、っていう希望的観測」(土田プロ)
内川にテンパイが入ったが、ここで打ち出されるが園田の当たり牌。土田プロの予言通り?満貫で、園田がトップに近づく2番手となった。
なお、
「うえーこれが満貫になるかねー」
と土田プロ。
南2局。痛い放銃となった内川に大物手が入る。
「鳴く!全部鳴く!」
と、ひよ……じゃなかった小林アナが興奮するも、土田プロは無反応。
「ポンポンっていければいいんですけど」(土田プロ)
しばらくしてカンが鳴けた。ここでを払ってホンイツに向かう。しかし土田プロは
「筒子の一色手が見えてしまうので、かなりケアされてしまう」
と否定的。仕掛けるならポンからで、待ちの最終形を推奨していた。筆者なら間違いなく鳴いているだけに、本当だろうかとむにゃむにゃ。
するとそこに園田からのリーチ。待ちの好形だ。
いとも簡単にすぐに掴んでしまう内川。