「麻雀」というゲームとは…プロセスだけでは読めない内川幸太郎の逆転劇【熱論！Mリーグ】担当記者：山﨑和也

「仕掛けると大体こういう地獄が待っているんですね」（土田プロ）

この時に筆者は「今日は内川の日ではなかった」と直感した。土田プロの予言めいた解説がズバズバ当たっていて、雰囲気がもう勝てなくなっている。いったんは粘るも、テンパイの形を取った際に放銃となった。

裏は乗らず、5800点の放銃。もし乗っていれば12000点だっただけに、再起不能寸前であった。少し気になったのは土田プロが「裏が乗らなければ」とつぶやいたこと。しかし筆者は軽く聞き流し、視線を茅森と園田に向けた。

冒頭。この一局の観戦記のテーマを『下位チームの逆襲』にしようと組み立てる。どちらがトップを取っても何とかなるか……。

南２局一本場。３着にいる朝倉が序盤から飛ばしている。あっさりと局が終わりそうに思えた。

とを鳴いており、素人目には索子のホンイツにも見えるのだが、最終手出しがなのでその可能性は高くないとのこと。はドラのそばで、ホンイツにするなら早めに切っておきたい牌だからである。３者もそれほど警戒している様子ではなかった。

カン待ちのまま巡目が進み、内川にひとつのターニングポイントが訪れた。上家の朝倉から出た。純チャンの手になっている内川としては喉から手が出るほど欲しい。しかもは場に３枚目の牌だ。

内川はこれをスルーし、門前で手を進める。点数がないため仕方がない判断だが、苦しいときによくある、働けど働けど……のケースにも思えた。

勢いに乗る園田。待ちのリーチをかける。アガればトップに立つだけに、勝負あったかに思えた。

朝倉は比較的通りそうなを切って道を譲る。園田が唯一のテンパイ形となった。

と、そこに一筋の希望が。内川に苦しいペンが埋まり、打でダマテンを取った。あと１枚のが山に残っている。は園田の現物なので他から出る可能性も。ほどなくして勝負は決する。

まさか。流れが一気に変わった瞬間だった。

平和・純チャンで8000点のアガり。スルーが実って内川が戦線復帰。一気に勝負は難しくなった。まだ園田は２万点台をキープしているものの、スコアは２－１となり、妖しい雰囲気が出てきたように見える。

しかし現実はそううまくいかないもの。ダブを鳴いた内川、手牌がまだ苦しい。

を引いてイーシャンテン。なんとか形になってきたがリャンカンのネックがどうか。

待ったをかけたのは朝倉だった。ここで少し間を置いてを切ってリーチ。の両面ではあるが、やや薄い待ちなのが気がかり。あるいは鳴かれる可能性を読んだものだろうか。

文字通りをもぎ取り、打で待ちに。朝倉の待ちよりも１枚分があり（３枚対２枚）内川が速度で逆転したように見えた。

しかし欲しかったは脇に流れていき、そして痛恨の引き。朝倉に3900点の放銃となった。内川に勢いが出てきたかに見えたが、これでまた勝負は３人の争いに。

南３局一本場はトップの茅森がを切ってカン待ちのリーチをかける。今度こそ、そろそろ終わらせましょうという雰囲気を感じた。

 

懸命に耐える園田と朝倉。は朝倉の手に３枚。茅森がアガるにはあと１枚のを引く必要があった。

食らいついたのはまたも内川。待ちはなんと同じだ。どちらが先に引くか。茅森がトップを確固たるものにするか、内川が希望をつなげるかの大勝負。勝敗は意外な決着を見せる。

注目のは園田の元に舞い降りた。

「あ～なくなっちゃった～～～」（土田プロ）

「あら～～」（小林アナ）

「あれ？」（土田プロ）

「ん？」（小林アナ）

「安全牌がないぞ」（土田プロ）

「あらっ、ええっ、やめて。ああああああああああ」（土田プロ）

「頭ハネです！」（小林アナ）

またも針の穴を通すようなアガりを決めたのは内川だった。こんな結末があるとは。茅森もアガりなのだが、次のツモ番が近い内川のアガりとなる。内川以外、全員が唇を噛み締める局となった。決めきれなかった茅森、放銃した園田、親を失って４着も近くなった朝倉。

オーラス。茅森がタンヤオで終わらせにかかる。茅森は園田、朝倉に満貫を放銃してもトップで終えることができる。親の内川にだけはいけない。

内川はかなりの整った手牌。ここで打とした。河の状況からがいい待ちに見えるのでなるほどの選択といえる。

今にも出そうなを抱える園田。をポンしており、トイトイの方針のようだ。