マストで
阪神タイガースを応援し、
銀杏BOYZに
どハマりしていたあの頃…
女流プロ雀士
【百恵ちゃんのクズコラム】
VOL.13
心技体
百恵ちゃんはこれまで色んな習い事や部活をしてきた。
幼稚園の頃から空手を習い体を鍛え、小学生になると毛筆と硬筆を習い達筆な字を手に入れた。
小学校高学年になったとき、バスケ部に入ったが考えられないくらい走らされたため、すぐに嫌になった百恵ちゃんは数ヶ月もたたないうちに親に無断で勝手に退部した。
頑張りたくはないが暇すぎた百恵ちゃんはかわりに器楽部に入ることにした。器楽部はアコーディオンがメインの楽器だった。アコーディオンが弾ければかっこいいに違いないと思い入部したが途中入部だった為アコーディオンはやらせてもらえず百恵ちゃんにあてがわれた楽器はタンバリンだった。
タンバリンを水平に持ち、垂直に突いて音を出すという玄人なタンバリンの叩き方を教わったが、かなりつまらなかった。
みんなが重い楽器を持って移動しているなか、百恵ちゃんはほぼ手ぶらで移動していた。その後もカスタネットなど、そこそこ賢い動物であれば扱えそうな楽器ばかり与えられ、百恵ちゃんは不満が募った。
上級生が引退するタイミングで顧問の先生に
「他の大きな楽器をやりたい」
と頼んだ。
しかしそもそも百恵ちゃんは楽譜すら読めなかったのでもちろんアコーディオンをやらせてもらえるわけがなく、シンバル担当になった。
憧れのアコーディオンではなかったが大きな楽器を担当させてもらえることを嬉しく思った。だが、新しくやる曲の楽譜を見て落胆した。ラヴェルのボレロという曲だったのだが、なんと出番が五回しかなかったのである。
しかも出てくるのはど終盤でほぼ突っ立っているだけの係なのだ。
出番が少ない上にあまり頑張りようのない楽器であるにも関わらず顧問の先生は百恵ちゃんを不憫に思ったのか必要以上に気にかけてくれた。先生が絞り出したアドバイスは
「出番が来るまで微動だにするな」
というものだった。
つまらなさのあまり、器楽部は辞めて地元のバドミントンクラブに入ることにした。
しかしなぜかお姉ちゃんにバドミントンクラブに入ることを反対された。
「バドミントンはそんな甘くないよ。中学でバドミントン部に入らないならやってもいいよ」
と言われた。がしかしお姉ちゃんは全然関係のないテニス部だった。全く意味がわからなかったがバドミントンクラブに入りたかったので訳のわからない約束をしてバドミントンをはじめることにした。
百恵ちゃんは元々運動神経がよかったのですぐに上達した。始めてから半年で初級コースから上級コースまでとんとん拍子であがり、暇があれば練習するというバドミントン中心の生活になった。
そして中学に入学する頃にはお姉ちゃんがグレはじめて家に帰って来なくなっていたので百恵ちゃんはその隙をついてバドミントン部に入部した。
しかし入部した百恵ちゃんは頭のおかしなお姉ちゃんのアドバイスをちゃんと聞いておけばよかったと後悔することになる。
顧問の先生が異常に怖かったのだ。
180センチ、100キロを超えるガタイなうえ暗いサングラスをかけ、髭をはやしいつも怒鳴っていた。そんな顧問の先生は熱狂的な阪神タイガースのファンで阪神が負けた翌日はすこぶる機嫌が悪くバカみたいな練習量になるので野球には全く興味はなかったが、阪神タイガースの試合がある日はプロ野球速報を必ずチェックしていた。
あの頃の百恵ちゃんは選手の名前は一人も知らなかったが阪神タイガースを心の底から応援していた。
そのうちにバドミントンにのめり込み、部活のきつい練習を終えると違う少年団の練習にも行くなどストイックな生活を送り、全道大会に出たり選抜選手にも選ばれ、部長にまでなったが百恵ちゃんは最後の中体連の二ヶ月前にバドミントン部を辞めた。
部活どころか学校自体に行くのが飽きてしまったのだった。辞めるときに顧問の先生に今数えても人生で一番だと言い切れる程怒られたが面倒くさいスイッチが入っていたので百恵ちゃんは折れなかった。
高校に入学し、またバドミントンをはじめることにした。顧問の先生が優しそうだったからである。
定時制の高校だったので放課後である21時から1時間だけの部活だった。そのため走り込みや筋トレ等は一切なく、ただただバドミントンを楽しむための百恵ちゃん好みの部活動だった。
百恵ちゃんは一年生の時から地方大会を勝ち抜き、全国大会出場を果たした。
全国大会は毎年クソ暑いお盆の時期に神奈川県の小田原市で開かれていた。
百恵ちゃんの学校は貧乏で予算がギリギリだったため地下にはフィリピンパブ、隣にはいかがわしいお店、斜め向には明らかにヤバそうな事務所があるというありえない立地のホテルに泊まらされていたがそんななかでも4年連続で出場し、団体戦優勝を一度、個人シングルス3位入賞を二度果たすという輝かしい成績を残した。
これは滝川市体育協会のスポーツ賞を受賞した時の写真である。
手前左は表彰式を観に来てくれたお父さんである。
態度だけは揃って一流の親子だ。
音楽
百恵ちゃんがこの世で一番見られたくないもの。
それはスマホの中のミュージックリストだ。あれを見られるくらないなら命より大事なiPhoneを躊躇なく破壊するだろう。
百恵ちゃんは普段機嫌が悪そうに歩いているが実はイヤホンの中ではドラえもんのうたを聴いていたりするのだ。
「今までの人生で一番聞いた曲は何?」
という質問をされたときに銀杏BOYZというロックバンドの「援助交際」と答えてドン引きされてからあまり言わないようにしているが百恵ちゃんは中学生の頃からその銀杏BOYZが大好きだった。
高校一年生の時、その銀杏BOYZが北海道に全国ツアーでやってくることになった。百恵ちゃんはありったけのお金を集めて札幌までライブを観に行くことにした。しかしチケットを買ったはいいがロックバンドのライブに同行してくれる友達が見つからずお姉ちゃんについて来てもらうことにした。
今でも覚えている。整理番号は28番だった。開場とともにステージに全力疾走するとなんと最前列をゲットできた。
しかし、他の人が入場を待っている間、最前列にいるにも関わらずお姉ちゃんがスクリーンに流れるバンドメンバーの写真を見て
「どの人がギターなのー???」