この宣言牌を、滝沢は鳴いた。
もちろん手牌を進める意図もあっただろうが、それよりも茅森の満貫ツモの可能性を少しでも削るために、一発を消すという思惑が大きかっただろう。
その後、滝沢はタンヤオで粘ろうとしていたが、朝倉、村上も前に出てきたことで手を崩した。
後は運を天に任せるしかない。
前に出る朝倉、村上。
ツモれない茅森。
結果は・・・、
村上の劇的なハイテイツモ。
滝沢は辛くもトップを守りきった。
試合後の選手たちは、一様に憔悴しきっていたように見えた。
その様子を見て、冒頭の近藤の言葉を思い出す。
彼らの感じている重圧の正体。
その答えは、この日解説を務めた多井隆晴(渋谷ABEMAS)の言葉にあるのだと思う。
「自分のためだけではなく、ファンのためでもあり、会社のためであり、社員だったり株主だったり、全部を背負っている」
そういえば、この日は村上や朝倉といった比較的表情が豊かな選手だけでなく、茅森、滝沢というあまり感情を表に出さない選手たちも、今までになかったような表情や仕草を見せていた。
これまでもプレッシャーはあったはずだが、レギュラーシーズンの残り試合数が少なくなるにつれ、選手にかかる重圧も、加速度的に増していっているのかもしれない。
Mリーグはここからが佳境だ。
そして選手たちは極限のプレッシャーを糧に、勝利を目指して極上の闘牌を見せてくれるはずだ。
Mリーグはこれから、もっともっと面白くなる。
この熱狂を、外へ。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。