日向藍子が拒んだ幕引き
期待値の向こうで生み出された
ドラマの行方は──
【須田良規のMリーグ2021セレクト13】文・須田良規
退屈なオーラスになるかな、と思っていた。
3月1日(火)の第1試合、南4局1本場の点棒状況は以下の通りである。
KADOKAWAサクラナイツ・沢崎誠 37900
渋谷ABEMAS・日向藍子 20700
TEAM雷電・瀬戸熊直樹 32800
EX風林火山・松ヶ瀬隆弥 8600
瀬戸熊と沢崎の差は5100。
東家の沢崎は伏せて終了できるため、実質この局の趨勢は、瀬戸熊の手にかかっていた。
しかしすでに南家の日向がドラ表示牌のダブをポンして3巡目にこのテンパイ。
このとき瀬戸熊はまだこんな段階である。
日向は、東家の沢崎と17200差、西家の瀬戸熊と12100差離された3着目。
ラス目の北家松ヶ瀬との差も12100。
もうこれは、日向が3着で終わらせる早い結末になるだろう。
沢崎さん逃げ切りか、瀬戸熊さんはトップが遠いな──、などと思って試合を眺めていた。
そして4巡目、ふいに日向の元にドラのが訪れる。
日向の手が止まった。
ここで、現段階でのポイント状況を見てみよう。
渋谷ABEMASは285.5pの3位で、レギュラーシーズンの突破だけでいえば安泰といっていい。
ただ、セミファイナルの最終戦を戦うために、上位4位以内には入っておきたいのは間違いない。
このまま沢崎がトップで終われば、素点+60p詰められることになる。
どうだろう?
風林火山がラスになるとはいえ、ABEMASとして満足というわけではないだろう。
ただ実際このままの3着終了を選んでも、仕方ない気はする。
というか、今のテンパイを崩して、何かを狙う人の方が少ないのではないだろうか。
しかし日向は──、打と行った。
昂った。
日向は、12000以上は打てない。
松ヶ瀬がハネマンをツモるかもしれない。
松ヶ瀬にマンガンを打つかもしれない。
ラス落ちのコースは現実的にある。
しかし自身がハネツモなら、ごぼう抜きのトップになる。
ダブホンイツドラドラならその条件を満たす。
日向はそのか細いルートを追って、ひたすらに不要なマンズメンツを並べていった。
ここに瀬戸熊からが打たれ、日向がポン。
ただの3着取りであれば、ここでこのゲームはもちろん終わっている。
沢崎のトップ逃げ切りだ。
しかし、日向の気迫の選択が、ゲームの結末をまるで予想できない展開に育てていった。
ここでラス目の松ヶ瀬がをアンカン。
松ヶ瀬も臨戦態勢である。
新ドラも増えて、日向も自らが長引かせた勝負の結末を恐れつつあったかもしれない。
10巡目。
日向にテンパイ。しかしドラは使えない形のマンガン止まり。