Mリーグいくさ物語
天衣無縫・二階堂瑠美伝
文・東川亮【曜担当ライター】2023年2月2日
時は2月。
寒さが身に染みつつも、少しずつ、少しずつ遠くから春の足音が聞こえつつある今日この頃。一方で、大和証券Mリーグ2022-23のレギュラーシーズンは終盤戦を迎え、対局の熱は増す一方。牌を握る手に、そして対局を見守る手に汗がにじむ。それは決して、効かせ過ぎた暖房だけのせいではないでしょう。
第2試合は、アガリの飛び交う乱打戦。
その主役として華麗な舞を見せたのが、「天衣無縫」二階堂瑠美でございました。
第2試合
東家:近藤誠一(セガサミーフェニックス)
南家:萩原聖人(TEAM雷電)
西家:二階堂瑠美(EX風林火山)
北家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
戦いの火蓋を切ったのは、フェニックス・近藤。
ホンイツのみ3900と打点はそこまでではないものの、初戦を取っての連闘だけに、萩原のリーチを蹴ってのアガリの感触、悪かろうはずがない。
放銃したのは瑠美だった。をポンしての1シャンテンですが、ドラと赤がたっぷり入ったチャンス手。これはむしろ、放銃しないほうがよろしくないくらいだ。後に訪れる天衣無縫の大暴れ、その予兆が感じられる一局だったと言えるやもしれません。
次局の近藤もいい手が入った。カンチャン受けにを引き入れ、を切ればの1シャンテン。
しかし近藤は、「大きく打って大きく勝つ」男。巡目も早くドラは、ここはのターツ払いで孤立のを生かそうという腹づもり。つまらないテンパイで打点も下がる、そんな一打は選ばない。
近藤のターツ払いをいぶかしげに見つつ、すーんとした顔で牌を切った瑠美。
その手の内には鋭い刃が。イーペーコードラドラ赤、満貫テンパイ。手変わりもあり、ここはダマテンに構えた。
追いついた近藤、を引き入れてテンパイ。このままでも待ちの5メンチャン、ならイーペーコー、ツモ・なら出アガリでも三暗刻がつく大物手だ。
ご覧の通り、一手変われば四暗刻、しかしここはリーチと出た。既に高打点は確約済み、ならばこの今の一手で決めに行く。横に曲がったは、燃えたぎる情熱の炎の色だ。
一方、瑠美の手も様相が変わった。引いて現物を打った後に、を引いて待ちがに変化。ここはしれっと無スジのを河へと放つ。
しかし瑠美、次巡にツモ切りリーチ!
このとき、瑠美の頭の内には自らの声が響いていたと言います。試合前、仲間に、自らに言い聞かせた誓いの言葉。
「全部リーチするから」
元より満貫確定の3メンチャン、オリるような手ではございません。
仲林もテンパイはしていたが、もはや近藤と瑠美の勝負。確かに山の残り枚数は近藤が圧倒的に有利だ。だがしかし、有利な方が必ず勝つわけではないのが麻雀。近藤の手には、フェニックスファンには禍々しく見え、風林火山ファンには神々しく光る、漢字の。
リーチタンヤオイーペーコー赤ドラドラ、おまけに裏裏は倍満の直撃。
アガリ役表示も2列目に突入。近藤の連勝ムードを一撃で断ち切る、かくも強烈な一撃が決まった!
早くもクライマックスかのようなアガリは、それでもまだ、序章に過ぎなかったのでございます。
東3局の親番は、タンピン形の手がハッキリと見える赤赤内蔵のチャンス手をもらい、自力で仕上げて満貫ツモ。
連荘した次局は字牌が3トイツでホンイツがハッキリ見える手牌をもらうと、第一打からソーズのリャンメンターツ払い。
構想通りにマンズが寄ってきて1シャンテン。字牌3種を鳴けばテンパイというところで、瑠美の選択が光ります。
ドラの受けを残すとして、生牌のと1枚切れのでのトイツ落としを選択。これは生牌のが既に誰かに持たれている可能性があり、一方で、1枚切れのは誰も持っていない可能性が高いという読み。
ご名答、2枚はチートイツに向かう近藤の手の内。
そして好形1シャンテンだった萩原からドラをチーしてテンパイ。