松本吉弘、
個人の栄誉よりも大切なもの
文・東川亮【金曜担当ライター】2024年3月22日
大和証券Mリーグ2023-24、3月22日にはU-NEXT Pirates、KADOKAWAサクラナイツ、KONAMI麻雀格闘倶楽部、渋谷ABEMASの4チームが対戦。どのチームもセミファイナル進出が濃厚であり、つまりこの試合は次のステージを見据えての前哨戦と言える。
特に、セミファイナルではレギュラーシーズンで4位以内に入ったチームが最終日に試合ができるという、わずかながらのアドバンテージがある。4位、麻雀格闘倶楽部と5位ABEMASのポイント差はわずかであり、下位チームほどではないかもしれないが、この直接対決も重要だ。
また、第1試合には岡田紗佳、松本吉弘というMVPが視野に入る2人が出場。むしろ、大勢の注目は個人タイトル争いに向けられるだろうか。
第1試合
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:小林剛(U-NEXT Pirates)
北家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
―船長が示す、海賊船が進むべき航路―
結果から書くと、試合は小林剛の快勝だった。
東1局は愚形から解消されて待ちの先制リーチをかけると、
ほどなくツモってリーチツモドラ赤の2000-4000。
リードを生かしてトップ目のまま南場に入ると、南1局には速攻を決めて岡田の親を消化。
南2局には赤赤、3900のアガリで寿人のリーチを蹴り、松本の親も流す。
南3局には3巡目のドラ1ピンフリーチをツモって2600オール。これが決定打となり、小林が個人5勝目を獲得してパイレーツの首位固めに成功、ポイントをプラス655.0まで伸ばした。
鳴くべき牌を鳴き、押すべき牌を押し、アガれる手をしっかりとアガる。今シーズンはあまり見られなかった、小林らしさが表れた試合だった。チームメートのMVP獲得のライバルとなり得る松本、岡田のトップを阻止した形にもなるが、小林はそのようなことを気にもとめない。
「今はセミファイナル、ファイナル、優勝に向けてポイントを積み重ねていく段階」
もちろん個人成績は気になるが、やはり目指すのはチームの勝利、そして栄冠。いかなる状況になろうとも、パイレーツの進むべき航路は変わらない。
―ダマテンの選択に込められた意志―
さて、この試合における一般的なMリーグファン層の注目と言えば、やはり岡田と松本、どちらがMVPへの挑戦権を得るか、という点にあったと思う。
試合は松本が少し先行して進んでいたが、東4局、岡田がチートイツドラドラをダマテンに構えた直後に松本が放銃、互いの順位が入れ替わる。
松本は守備駒のを残しながら最後のターツを選ぼうとしていたが、マンズが広がったことで全ての受け入れを逃さない切りとし、前傾姿勢にシフトしていた。おそらくここでを逃がす選択もあったと思われ、本人的にはいやな放銃に感じたかもしれない。
MVPを狙うには、この半荘でトップがほしい。南3局、そんな松本に選択が訪れる。
前巡の愚形テンパイ取らずから、今度はタンヤオにピンフもつく亜リャンメン待ちのテンパイになった。ダマテンでも満貫で2番手に浮上してオーラスを迎えられるが、リーチしてツモればドラ赤を生かしてハネ満、トップ目の小林に親かぶりをさせ、オーラスに現実的な逆転条件を残すことができる。
だが、松本の選択はダマテン。
次巡、ツモで満貫。ただ、リーチをかけていれば一発が絡み、リーチツモ一発タンヤオピンフドラ赤、裏ドラが1枚乗れば倍満で、小林の背後まで迫れていた。
567三色でさらなる打点アップも見たか。
待ちが決していいとは言えず、ダマテンでよりアガリの確率を高めたのか。
もちろん、松本ほどの打ち手がそれらを考えないはずがない。しかし、彼がこの場面で最も考えていたのは、
寿人との点差、すなわち
KONAMI麻雀格闘倶楽部とのポイント差だった。
ABEMASは、第一の目標であるセミファイナル進出はほぼ達成と言っていいポジションにつけている。
そうなれば次なる目標はファイナル進出であり、それを考えると、最終日に試合がない5位・6位になることは大きな不利になり得る。接戦となった場合、最終日を戦うライバルチームが目標を可視化しやすくなるからだ。