「より速く、より高く、より強く」
〜鈴木優のクレバーな立ち回り
文・千嶋辰治【金曜担当ライター】2024年10月25日
近代オリンピックの祖であるクーベルタンは、
「より速く、より高く、より強く」
という言葉をオリンピックのモットーとした。
これはスポーツ全般に対して掲げられたものであるが、こと麻雀においても通ずるものがある。
より速く… とは、他家に先んじてアガることが求められる点において。
より高く… とは、文字どおり勝つために高い和了点が求められる点において。
速くアガるだけなら、麻雀はこんなにも深みを持ったゲームとはならなかっただろう。
そして、高くするだけなら… これも同じ。
では、より強く… とは?
その答えの一端が、今日の鈴木優の姿に表現されているのではないだろうか。
第1試合

東家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
「戦闘民族」と自らを表現する優。
このキャッチフレーズは、戦う=リスクを背負うことを意味するのだろうと思う。
しかし、それが即ちリーチと言う戦術に集約されているわけではないということが語られた一局を紹介したい。
東1局2本場。

西家である優の配牌。
赤ドラが2枚、そしてタンヤオが見える好配牌を手にして、第一ツモが。

そしてをツモってわずか3巡でほとんどのネックが解消。
速くて高い一撃へ手応え十分だ。
と、そこへ。


親の寿人から切られたソーズに活路を見出すべく仕掛けを入れた堀。
見た目はの2度受けの形だが、そのうち一つが鳴けたら残りのシャンポンは拾いやすい。
ここは寿人の連荘を止めたいところ。


堀の構想が見事にハマって、電光石火のテンパイ。
スッとアガれると、寿人の親落ちと同時に優の勝負手をも潰すことができる。
あるいは、この局を制することができていたなら堀の5連勝は現実のものとなっていたかもしれない。
しかし、このテンパイが中々アガれない。
もつれる間に優にテンパイが入った。

タンヤオ赤2のテンパイだ。
さて、ここで冒頭に示した「より速く、より高く」の命題を思い出してほしい。
2フーロの堀が相手の優。
程よい待ちに替わったところでリーチをぶつけて相手を下ろし、場を制圧する姿を期待したくなるのだが…。

単騎から
へ変化してタンヤオピンフ赤2の満貫テンパイ。
良形テンパイへと変化したが、優はリーチを打たなかった。
注目すべきは堀の河。
ピンズが多く切られており、ヤミテンならを拾える可能性が高い。
さらに、堀の河に注目している寿人、多井に対しても同様である。
しかし、これがリーチとなれば話は別。
優に注目が集まった結果、堀のシャンポン待ちが有利になるケースは想像に難くない。
リーチツモでハネマンの誘惑は非常に甘美だが、その香りに誘われるとこの手は成就していなかったかもしれない。