それは数ある中の一つではなく 獣の切り札・下石戟の新たな一歩【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/2 第2試合(麻雀LIVEチャンネル)】担当記者 東川亮

それは数ある中の一つではなく

獣の切り札・下石戟の新たな一歩

文・東川亮【木曜臨時ライター】2025年10月2日

その男はいつしか、次期Mリーガー候補として名前が挙がるようになっていた。

そして2つのオーディションに呼ばれ、『BEAST X メンバー入替オーディション』に優勝。高い実力を結果で証明し、Mリーガーの座を勝ち取った。

下石戟

2年連続レギュラーシーズン敗退からの逆襲を期すBEAST Xにあって、切り札として目される実力者である。Mリーグではここまで、4着・3着・2着。そろそろトップがほしいところだ。

第2試合

東家:二階堂亜樹(EX風林火山) 

南家:下石戟(BEAST X)

西家:醍醐大(セガサミーフェニックス)

北家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)

東2局1本場。

伊達がペン【7ソウ】チー、【6ピン】をリャンメンでチーと仕掛けるなか、親番の下石も三色崩れの役なしテンパイで粘っていた。残りツモ番1回、ここさえしのげば連荘というところで、引いてきたのは【西】

伊達の手を考えると、【1ソウ】4枚切れで一気通貫は消え、【7マン】【9マン】が4枚見えで678、789の三色も否定されている。役があるとするならば役牌がらみが確定で、残っているのは【西】【中】。つまりこの【西】は、伊達に対して相当厳しい牌である。

しかし、下石はこの【西】をツモ切った。しかも、ノータイムで。

結果、伊達に3900は4200を放銃。

試合後、この場面について聞かれた下石は「50%当たるけど、2000か3900くらいならくれてやる」と語った。2択で当たる牌を切るのは、話だけを聞くと相当リスキーに思える。ただ、その後に語った下石の計算が非常に興味深かった。

自身が押してテンパイとした場合、伊達と2人テンパイなら1500点の収入。一方で、もし伊達に放銃した場合、伊達の手が下石の言うとおり「2000か3900」とすると、平均失点は

(2000+3900)÷2=2950

これに「50%当たる」という評価、つまり確率1/2をかけ合わせると、放銃時の平均失点は1475点となる。差し引きで考えれば、押したほうがほんの少しだけ実入りのいい勝負ということになるのだ。また、役牌暗刻のパターンもあるので、放銃確率はもう少し低そうではある。まあ、実際は本場があったので計算は少し変わり、それは下石も少し失念していたようではあるのだが。

この対局を解説した村上淳は、旧知の仲である下石のことを「自身の読みに身を委ねられる選手」と語っていた。この場合は手牌読みというより打点読みではあるが、こういう計算を前もってしておきつつ、その理に身を委ねて迷わずに押せるところに、下石戟という打ち手の本質が表れている気がした。

その後、劣勢だった下石は東4局1本場で醍醐から5200は5500をアガって南場を迎えると、

南1局には満貫丸見えのチャンス手をもらう。

早々に【發】、ダブ【南】と仕掛け、

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