アマチュア最強位、JOKERからの贈り物【麻雀最強戦2025 ファイナル2nd Stage】観戦記【B卓】文:中野巧

アマチュア最強位、
JOKERからの贈り物

【B卓】担当記者:中野巧 2025年12月14日(日)

近藤、森山が勝ち上がったA卓の放送をみていたB卓の選手たち。その言葉数の少なさやリアクションからこれまでとは違った、ファイナルならではの緊張感が感じられた。
8月から始まった最強戦も今日が最終日、桑田の3連覇なるか、JOKERが2012年ぶりのアマチュアでの最強位となるのか。注目の一戦が今はじまる。

東家:JOKER(アマチュア最強位)
南家:多喜田翔吾(最強の遺伝子)
西家:桑田憲汰(現最強位)
北家:滝沢和典(政権抗争勃発)

東2局 滝沢3フーロしてノーテン

試合前、滝沢と簡単な会話を交わしたが、のちに実況の日吉辰哉と解説の瀬戸熊直樹が指摘した滝沢の表情の硬さを感じた。もとより表情が豊かな方ではないが、それでもいつもと違う空気を感じたのだ。ここで滝沢が勝てば2011年ぶりとなるファイナル決勝、今は当時の自分のためだけでなく、様々な人の思いを背負って、この場に臨んでいるのである。

滝沢はドラドラで自風の【西】があるも、アガリまではターツが不足しているところからカン【3ソウ】をチーして進めていく。

【西】のポン、【8ソウ】をチーして3フーロ。滝沢が3フーロしてノーテン。

結果はあと1牌が引けずノーテンのまま流局となってしまうが、親の多喜田と桑田は滝沢を警戒し、迂回しながらの進行をさせられた。滝沢はベテランらしく老獪な打ちまわしで、同卓者を困らせた。

 

東3局 リーチ一発ツモJOKER

私はこの試合の前日、ファイナル1st Stageの試合をJOKERの地元である浜松の雀荘で観ていた。JOKERを知る仲間たちが多くおり、みんなに応援されていた。地元ではJOKERはフリー強者で知られており、めいっぱい牌を残した進行や、仕掛けの鋭さ、押し返しの強さはプロ顔負けである。憧れのプロ選手はA卓で勝ち上がった近藤誠一であるから、この試合はJOKERの麻雀の歴史上もっとも勝ちたいものとなった。

その気合が通じたか、好配牌から5巡目に【4ピン】【7ピン】待ちでテンパイ。打点はピンフのみと物足りないが、フリー強者らしく迷うことなく牌を横に曲げる。

一発で【7ピン】をツモり、裏ドラ1枚乗せ、満貫のアガリに。将軍桑田の得意技を、彼の親番で決めた。

 

東4局 滝沢のフリテンリーチ

強烈な一発ツモでJOKERがリードした東4局。滝沢は親番ですでにイーシャンテンの好配牌をもらう。道中いろんな選択肢があった中、最後は【6マン】を引きフリテンの【1マン】【4マン】【7マン】待ちテンパイに。ここでドラの【4マン】を引ければ6000オールとなり、一気に勝負が決まる可能性もある、滝沢の人生で10番以内に「ツモりたい」リーチとなった。

結果は安めの【1マン】をツモ。ただ裏ドラが【1マン】で4000オールのアガリに。これでJOKERを超え、トップ目に立つ。

3万点越えの滝沢・JOKER、1万点台の多喜田、桑田と二分する構図に。

 

東4局1本場 多喜田の遺伝子を感じる選択「はじめてみるチー」

多喜田はコミュニケーション能力が非常に高い。今日の打ち上げの場でもすべての人と乾杯しに回っていた。今回の最強戦には同じ最高位戦の先輩であり上司の園田賢プロの推薦で出場し、インタビューで話していた雰囲気などは、まさに園田賢の遺伝子を感じさせた。
試合前に「僕が勝たないと来年の若手の枠が消えちゃうかもしれない。だから今日は勝たなきゃいけないんだよね」と話すは、29歳の若手である。

多喜田はここから【中】をポンして打【3マン】。ドラの【北】を使った満貫以上のホンイツを目指す。

【中】を加カンし、新ドラが増える。上家にいるJOKERが1シャンテンであることも味方し、【6ソウ】をポンできた。その後ドラである【北】単騎のテンパイに。ここまで順調に進んでいた多喜田だが、自身の加カンで眠れる将軍を起こすことになる。

新ドラの【9ピン】を重ねて1シャンテンとなった桑田。かなりテンパイ気配のある多喜田に対して、安全に行くならドラの【9ピン】を切ってもおかしくない中、将軍らしくどしんと構えた【2ソウ】切り。この時、多喜田の顔がゆがんだ。

桑田のリーチが入り、JOKERが現物の【2ソウ】を切ると多喜田が止まった。次の瞬間、【2ソウ】をチーして、打【北】【5ソウ】単騎に待ちを変えた。リーチに対して通っていない【北】をわざわざ打ってまで打点を下げたのだが、この時、多喜田の頭の中には「桑田の手には【北】【9ピン】かが2枚ある」ことがわかっていた。なぜなら、桑田はわざわざソーズの一色をしている多喜田に危険牌である【2ソウ】を2枚切っていることから、放銃のリスクを背負ってでも雀頭を変えたかった=ドラという読みである。また2枚とも手出しのため、【北】の単騎待ちは想像しにくい。

と聞かされても、なかなかできることではない。この大舞台でこの選択をすること、その考えをこの数秒で完了していることが素晴らしい。普通はチーした後に「もし【北】をツモってきたらどうしよう」という恐怖に逆らえないからだ。
多喜田は100歳まで生き、100歳まで麻雀プロをしたいと試合後語ったが、彼ならできる気がする。10年後この【2ソウ】をチーするかどうかは定かではないが。

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