麻雀最強戦2019全日本プロ代表決定戦観戦記【B卓】負けたら無名雀士のまま…四者の悲痛な思いが交錯する重い攻防

麻雀最強戦2019

全日本プロ代表決定戦

負けたら無名雀士のまま…

四者の悲痛な思いが

交錯する重い攻防

【B卓】担当記者:渡邉浩史郎 2019年9月15日(日)

 

全日本プロ代表決定戦A卓は序盤から大きく点棒が動く波乱の展開であった。まだ見ていないという方はぜひA卓の観戦記を見てきてほしい。

一方のB卓ではどのような戦いが繰り広げられるのか。まずは出場選手を見ていただこう。

麻将連合、中出雄介!トレードマークであるホワイトメガネを外すとそこには赤く輝く瞳が!カラーコンタクトで実にカッコいい入場をキメてくれた。昨年の最強戦では鳴きで泣きを見ることになってしまったが今年は鋭い鳴きが見られるか?

 

日本プロ麻雀連盟、太田昌樹!3段目が勝負というかなりの面前派。静岡の切り込み隊長は最強戦の舞台でも切り込みまくって優勝を狙う!

 

日本プロ麻雀協会、仲林圭昨年の雀王決定戦にも出場した協会のトップリーガー。麻雀においては状況を分析し最適解を導く怜悧さを持つ、まさに“龍の名を継ぐもの”である。最強戦で最強の名も継ぐことができるのか!?

 

最高位戦日本プロ麻雀協会、持留敏夫!予選では三倍満をツモってこの舞台まで勝ち上がってきた。暗刻手の打点を武器とする力強い麻雀で予選からトップ通過を狙う!

奇しくも4団体で、四者四様とでもいうべきタイプの違う4人が集まった。この4人でどんな麻雀が紡がれたのか、それでは対局を見ていこう。

東1局

親の太田の打牌選択が光る。

一手替わり三色の手で、とりあえず聴牌を取る切りの人が多いのではないだろうか?しかし上家の仲林がすでにを二枚切っていて、の横伸びで理想形の三色になる可能性が薄い。一方で……

上家のソウズの打ち具合と対面の第一打からソウズの下は山に多く残っていてもおかしくない。このを的確にとらえてリーチといった。たとえ後手を引くことになっても良形、高打点どちらかで押し返すことができる、面前派のお手本のような手筋だ。

しかしこのリーチは実らず、太田の一人聴牌で流局する。

東1局1本場

をポン、をポンした中出の手牌がこちら。

中出はここから……

さらっとドラのを切った!

ここではを残した打点向上のメリットよりも後にが切りにくくなるデメリットを重く見た形だ。もちろん今鳴かれてしまう可能性もあるがそれでも安牌を持っていることで躱せる可能性が高くなる。半荘一回戦で二着抜けの最強戦ルールでは高い放銃が致命傷であり、それを事前に回避するクレバーな一打だ。下家の仲林の染め手に以降したような河への先打ちの意味もあったのだろうか。

着々と手を進めていた仲林もこのポンで清一色待ちの聴牌。自身でを4枚使っておりまだテンパっているかどうかわからない河である。

中出も遅れながらこのポンで聴牌。他家から見れば非常に嫌な河である。ドラのを先に打って二枚切れのを残していたということはかなりの良形、またはドラに頼らなくても高いなどといった要素が含まれていると考えられる。

実際は一手替わり満貫がある現状2000点の手なのだが、河を見るとトイトイやマンズのホンイツに当たる牌は相当切りにくい。もしかするとそういった相手へのブラフを込みで先にを切ったのかもしれない。

両者上がれない中、静かに好場況のペンのヤミテンを入れていた持留。ここでもヤミテン続行をするかと思っていた。

リーチだ!しかもツモり三暗刻待ちでのリーチといった!

当然ダマテン一盃口よりこのようにリーチしてツモった方が高い。だが中出、仲林の両者がお互いに押しあっている以上かなり攻撃的に思えるリーチだ。ここには一回戦勝負だからといった理由以上に三倍満の暗刻手をアガることで予選通過した持留のプロとしての矜持を感じた。

これを受けて困ったのが仲林。一発目に持ってきてしまったは中出にも持留にもシャンポンや単騎の形で当たりうる生牌だ。ここでさきほど中出の仕掛けたドラの先切りが効いてきている……。降りざるを得なくなってしまった。

そして持留が力強くを一発ツモ!自身の信じた選択できちんと結果を残す、最高のアガリだ。この満貫で持留が一歩抜け出す展開になった。

東2局

仲林がこの形からをポン。少し遠めだが大体高くなりそうな仕掛けである。

これがゆっくりと形になり満貫のツモ。大きな収入となった。

東3局

親の中出のリーチに太田が放銃。

2000点だが二着残りのこの試合では少し痛いか。一度切ったを残してうまく三色ドラ1の高打点で押し返せる手を組めたがための放銃となってしまった。

東3局1本場

持留がドラドラの手牌から今重なった二枚目のをスルー。これには様々な意見があるだろうが鳴いても愚形の多い二向聴であり、安全牌も少ないことを考慮したスルーだろうか。そしてを引き入れて狙い通りの七対子の一向聴になる。

一方で太田がからをチーしてタンヤオに向かった。面前派とは思えないアグレッシブなチーだ。早そうな親の現物は鳴きやすく、いざというときは親の安牌のを切ることができるといったところだろうか。また今の点棒状況で自分以外の人にアガられると自分だけ突き放されてしまう可能性も高そうだ。実に柔軟な打ち方である。

これがうまくいき仲林からすぐにがツモ切られて待ちの聴牌を入れるが……

親の中出からのリーチの一発目にドラのを持ってきてしまう。これは当初の予定通り……

!?全くの無筋のドラのをツモ切った!?

考えてみる。太田の立場からしてみれば、ここで中出に高い手をツモられてしまったら競っている二着目三着目を追いかける四着目になる。状況的にはかなり厳しいものになりそうだ。もちろん放銃してしまえば決勝進出は厳しいどころか絶望的なものになる。こうした選択の中で、太田は自ら切り込んで親のアガリを阻止するほうがよいと考えたのであろう。自身の待ちが両面で、決して悪い待ちではないことを信じたのだ。

まさに血のにじむような切り込みである。これが静岡の切り込み隊長たる所以か……。

太田が切り込む中、仲林もこのバックの一向聴からを押した。かなり強気の攻めだ。

しかしここは中出のツモ。裏こそ乗らないものの着実に点棒を積み重ねていく。

東3局2本場

親の中出がをポン

ここは打とした。残したを重ねれば満貫になるし、先にを切ることでポン出しとはいえが盲点になることもある。

しかしここでは打とした。恐らくこれは河作りではないだろうか。こうすることで自身の手をソウズのホンイツ風の河にしてへの警戒を薄めようとしていたように思える。とはいえ字牌の切り出しから他家には普通のメンツ手のように見えていそうなので自己都合でを残すのも手であるように見える。

チャンタを見て打。自風の後の切り出しで他家からはかなり手が整ったように見える。

ここで守備的な打ち筋を見せたのが太田。を引いてきて少孝ののち降りを選択した。はドラのツモ切りから通りそうとはいえ、最終手出しの時点でカン待ち満貫聴牌をしていて、アガりやすさ重視でドラ1ツモ切りの線は十分にある。もポン出しの関連牌で、対子で持たれていてもおかしくない。この二枚を押すよりはという判断だ。

一方それとは対照的な判断を見せたのが仲林。形式聴牌でから仕掛け出し、中出のツモ切ったもチー!片筋のを切りだしていった!

この点棒状況の形式聴牌で片筋のを切る人はなかなかいないだろう。

一応中出の最終手出しはであり、

のスライドくらいでしか当たる形がなさそうだ。またこれを通して聴牌料をもらった時にはかなり二着目が競っているトップ目に立つことができる。そういった状況で得られるアドバンテージを重視してこの形式聴牌を取ったのではないかと私は推測している。

仲林の目論見通り、この局は中出と仲林の二人聴牌で流局する。

東3局4本場

中出の配牌がすこぶるいい。

すぐにでもタンピンのリーチがかかりそうだ。しかしこれが少し拗れる。

皆さんは何を切るだろうか?を切って広いイーシャンテン+高め三色の形にするのが一般的だろうか。

しかし中出は打とした。

恐らくはの三面張待ち+ドラ受けの重視と

待ちに自信があったのではないだろうか。

を切ってしまうとを引いた時には単騎聴牌になってしまう。

またを先に引いた時もドラそばのノベタンというかなりアガリにくい待ちになってしまうことになる。今回中出は他家の河から

に相当自信があり、そちらの方が山にいる・先に引けると踏んだために

となったのではないかと予測している。

しかし次々巡にはを引き戻してを切った。これは自身の読みに反してすぐに引けず、巡目が序盤から中盤になったことも踏まえて広い一向聴にしたのだろう。

なんと実際は読み通りが少なく

が多かったのだ。1牌の後先で泣かされる中出……

しかしなんとかソウズの多面張で聴牌。ここは手堅く黙聴を選択し、仲林から打ち取った。

東3局4本場

太田がリーチをかけてこれを一発ツモ!

リーチ・一発・ツモ・ドラ1で満貫だ。一見手成りのリーチにも見えるがそこには太田オリジナルが隠されていた。

ここで打。前々巡のの時点で字牌に手をかける人も多そうだがここは字牌を厚く持ち、打点、後の受けの種として温めていたのだ。なかなかの重なりを捉えている人は少ないのではないだろうか。

 

誰も抜け出せないジリジリとした半荘が続く。

東4局1本場

親の仲林のリーチに終盤手詰まった持留がダブルワンチャンスで通れば2巡凌げるで放銃。

これも裏が乗らずリーチのみでなかなか抜け出せない仲林。ほっとする持留。

東4局2本場

親の仲林の手牌。ここで形を解す打。まだ他家が早そうな情報がそんなになく、ここは打点と良形を作りに行った。

そしてタンヤオのリーチ!ちょうどテンパった太田から一発で打ち出された。

リーチ・一発・タンヤオの7700は8300!これで仲林が一歩リードか。

打った太田は手牌に関係のないが安牌と振り替わることがなくての聴牌放銃となってしまった。

東4局3本場

カン一気通貫のヤミテンを入れていた持留がドラを引いてきてこれをツモ切りリーチ。

これをポンして聴牌の仲林は待ち。仲林はこれをアガれば決定打だが……

そうはさせじと持留がをツモ!満貫でまだまだ勝負はわからないまま南場を迎える。

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