熱論!Mリーグ【Tue】
魚谷侑未の“90度”
マーメイドは麻雀を
愛してくれているのか
文・ZERO【火曜担当ライター】2018年11月06日
私は女流プロが嫌いだ。
いや、正確には嫌いだった。実力が伴っていないのにも関わらずプロを名乗り、女であることを利用して麻雀で仕事をしていることが許せなかったのだ。私のその稚拙で偏った考えを改めるきっかけとなったのが、昨夜登場した
セガサミーフェニックス、魚谷侑未である。彼女は不思議な存在だった。日本プロ麻雀連盟にしては…と言ったら語弊があるかもしれないが、魚谷はとにかくよく仕掛ける。天鳳村で育った私がみても全く違和感を覚えないくらいポンチーするのだ。また、よくtweetもする。麻雀の内容も多く、ブログでも対局内容をとり上げることが多い。おや、何か違うぞ…と。私の知っている女流プロはゲスト告知とSNOWとスイーツくらいしかツイートしないのに、この魚谷という女流プロは麻雀の話をするではないか!と。私の中の女流アレルギーが崩れていく瞬間だった。
そんな魚谷は本日
小林、鈴木、白鳥…という各団体のトッププレイヤーに囲まれた。Mリーグ自体がトッププレイヤーを集めたものなので、もうそんなことは気にしていないか。
今日は始めから魚谷を応援する!と決めていたので開局の親スタートであるその配牌に注目していた。カモン!赤!カモン!ダブトイツ!
…。チャ…チャンタと国士とホンイツが見えるね!そんな私の気遣いをよそに魚谷はから切り出した。イーシャンテンまでいくも小林にハネ満をツモられて親かぶりスタートとなってしまった。辛い。
東二局。
魚谷はこの手牌で迷い、そしてを切った。はツモでアタマができ、タンヤオドラ1のイーシャンテンになる強い浮き牌だ。このことを魚谷に直接聞いてみた。
魚谷「が大事な牌というのはわかっているのですが、ピンズの上(789)を嫌っている人が複数いたので、ちょっとマイノリティな選択をとりました。前巡、を切った時点でピンズの上がいいなってことは意識していたので。」
なるほど、たしかに下家と対面がピンズを嫌っている。魚谷はこのように質問したことに対し、一つ一つ理路整然と答えてくれた。彼女はこうして日々麻雀と真正面から向き合い、そして誰よりもファンを大切にする。
これはお客様のお見送りの際、エレベーターが閉じるまで深々と頭を下げる魚谷プロの姿だ。女流プロ、というだけで色眼鏡で見られるし、距離感のわかっていないファン(追っかけ)への対応も骨が折れるハズだ。また化粧代や衣装代もばかにならない上、体調を崩すことは男性よりも多いだろう。そしてこの神対応である。もしかしたら麻雀しかやらない男性プロよりも、女流プロの方が見られることの意識…プロ意識は高いのかもしれない。いや、そもそも男女でカテゴリー分けする私の歪んだ考え方が間違っていたのだろう。男性プロだろうと女性プロだろうと、頑張っている人は頑張っているし、意識も高い。
魚谷はこれをメンピンドラに仕上げ、マンガンをアガる。
そして迎えた東三局のこと。
私がお茶を入れに席を外した一瞬のうちに魚谷は仕掛けていた。自風の西をポンしたわけだが、これはもう少し手が整ってから…と仕掛けない人も多いのではないか。私もギリギリ仕掛けるかもしれない。しかし…
このはツモ切る。魚谷はを切ってめいっぱいに構えたが、手牌が中張牌ばかりでさすがに危険度が高いように感じる。かわし手はあくまでもかわし手で、なんなら前巡に切っている字牌も残した方がよいかもしれない。こうして魚谷は上家の白鳥からのリーチを受ける。
待ちも悪くて2000点の手だ。しかし現物は1枚。私なら1枚だけ押して次のキツイ牌で⇒と切っていくところだが…
魚谷「まったく同じ思考でした。はのワンチャンスでもあり、比較的押しやすかったんですよね。」
頻繁に仕掛ける打ち手はここら辺の押し引きバランス感覚が生命線になる。麻雀に取り組む姿勢だけでなく、雀風まで似ているとなると、やばい…ファンになってしまうではないか。頑張れ魚谷―!それいけ魚谷―!と思う間もなく白鳥が一発でハネマンをツモ。
「ハイ」と点棒を支払う魚谷の声にも注目してほしい。「気持ちのいい発声大賞inMリーグ」があったら村上プロに次ぐ準優勝を獲得するだろう。みんな勝ちたい…と思っているときに背筋を伸ばし、表情を変えず、そして凛とした発声を心がけている。そんな魚谷の姿勢にプロ意識の高さが垣間見えた。
2着目で迎えた南場の親番。
ここからまた迷ってを切った。?さすがにこれは打として567の三色で受けた方がよくないか?
魚谷「親ということでリーチへの受け入れを最大限に構えました。仕掛けている白鳥プロもリーチすればオリてくれると思ったので。は1枚切れのカンチャンでしたが、感触は悪くありませんでした。」
結果的にその選択がドンピシャ。
を引き入れてテンパイ即リーチ。たろう、小林の両名をおろし、唯一テンパイで押し返していた白鳥も…
このドラが切れずにギブアップ。流局間際にたろうのオリ打ちを拾った。結果は最高だったが、それでもその半荘の決定打となりうるので三色のルートは残すべきだと思う。減ってしまう受け入れは「仕掛けられる」というメリットで補えないだろうか。
そして悔やまれるのが南3局。
魚谷はこのを残して2枚切れのを切った。迷彩だろうか?
魚谷「たろうさんの仕掛けにノーテンで打ちたくなかったんです。ラス目で親のないたろうさんはマンガンある可能性が高い。5の牌は赤が絡むので非常に打ちづらかったです。6巡目に切ったもいやだったほど。」
なるほど、たろうケアだったのか…たしかにたろうはこのとき、とをポンしている。そしてこの捨て牌だ。
が赤がらみのトイトイで当たるのならば、やが早すぎるような気がしなくもない。なお、この時のたろうの仕掛けは
お得意の「ガラクタ仕掛け」だった。ラス目であることを活かして牽制しながら遅い巡目の高打点テンパイを狙ったのだろう。魚谷が最悪の形で惑わされることになった。
白鳥のリーチ一発に最高の形でテンパイ。さっきまで切れなかった牌をここで切っていいものか…
迷う魚谷。タイミングは最悪だが、このテンパイなら…とをつまんだ。
この一発放銃が致命傷となり、一回戦は2着となった。