麻雀最強戦2018
ファイナル観戦記⑤決勝卓編
それは“運”なのか⁉︎
近藤、片山、渡辺、野間…
すべてに可能性があった
「最強位」へのルート
【ファイナルA卓】担当記者:ZERO
とある人が言う。
「一回勝負の麻雀なんて、運ゲーじゃん」
最強戦を揶揄(やゆ)するときによく使われるワードだ。たしかに運に左右される側面はあるかもしれない。
ではそう言う人に問いたずねたい。
一体何回打てば「運ではない」と言い切れるのだろうか?…と。
4回?10回?20回?100回?
麻雀の成績を付けている人ならわかるはずだ。たとえ同じ人が同じ環境で1000回打ったとしても成績は大きく上下にぶれる。そこまで打っても運の要素を排除できないのであれば、1回でもいいのではないか。
A卓。
ハードパンチャーが揃ったものの、運命に誘われるように初代優勝者・片山が逃げ切った。
B卓。
オーラス、16巡目のことだった。トップ目の親・渡辺がツモアガリするものの流局策をとってアガらない判断をとった。するとその瞬間に「三倍満ツモ条件」の瀬戸熊と「倍満ツモ条件」の福本の2人が、裏ドラ頼みではあるものの条件を満たすテンパイを入れてリーチ、その宣言牌を岩崎が鳴いてこちらも逆転のテンパイを入れた。
4人に全員チャンスがある…!マンガのような急展開だが、誰もアガリに結びつかず、祈るように見守るしかなかった新宿の妖精にファイナルのチケットは手渡された。
(かわいい)
C卓。
この卓で一番印象に残ったのは、東1局に国士無双をアガった近藤ではない。追い上げた愛内や小林でもない。放銃した紺野である。放銃した瞬間、紺野は牌姿を一瞥(いちべつ)すると、全く動揺するそぶりをみせず、ただ小さく「ハイ」と言って32000点を支払った。眉1つ動かさず、それは1000点放銃したときと全く変わらないリアクションだった。
(眉ないけど…)
紺野にとって、勝てば今後の人生が変わるかもしれない大事な、大事な戦い。練習を重ね、心身ともに整え、この舞台に挑んできた。そうして迎えた当日、東発の親での交通事故とも呼べる不幸な出来事。その心情を察するとこちらまで辛くなってくる。際立つ勝者の陰で、運命を受け入れ潔く散った敗者は、私の目からは圧倒的にカッコよく見えた。
D卓。
麻雀界最高峰とも思われるメンバーに囲まれ、広島から馳せ参じてきた野間がジャイアントキリングを達成した。
どうだろう。参加者16人が全て、麻雀の持つ不条理を受け入れ、それでもなお、勝つ確率を0.01%でも上げようと、1つの選択に心血を注いでいる。するとそこには必ずドラマが起こり、必ず名場面が生まれる。
いや16人ではない。読者を含む全国のプロ&アマ参加者2万人がこの舞台を目指し、そして多くの人が最強戦を作り上げるために働いてきたのだ。ファイナルの決勝ともなると、もはやその場所は神々しくも見え、スタジオは隣にあるはずなのに、遠い場所での出来事のように思えてくる。
それでも君は「運ゲーじゃん」と笑うだろうか。
「野間の試練」
東一局、野間の親リーチで戦いは幕を開けた。
野間はアマチュア最強位。全国18772人の代表だ。野間は手つきがまだおぼつかない。それもそのはず、競技麻雀を覚えてまだ2年だと言うのだ。しかしその情熱は半端ではなく、トッププロを自宅に招いて勉強会を開いたり、各種戦術書は全て目を通したりして日々研鑽している。そして全国21か所の予選に参加し勝ち抜いてきたわけだ。普段は眼科医。しかしリーチと発声する野間の姿を見ると
完全に戦士の顔をしている。普段の生活を忘れ、ただただ卓上の出来事に没頭できる麻雀のなんと素晴らしいことか。そんな野間のリーチは
リーチドラ1のカン。何度も言うが親のリーチドラ1は狂暴だ。打点上昇の恩恵を一番受けることができる部分であり、牽制力も半端ない。そしてこのは山に4枚まるっと生きていた。
アガるのは時間の問題かと思われたが、このリーチに真っ向から立ち向かったのが、最高位でありMリーガーである近藤だった。