熱論!21人のMリーガー
黒沢咲・チーム雷電
〜セレブ打法を陰で支える
”胆力”と”守備力”〜
文・真中彰司【TEAM RAIDEN担当ライター】
Mリーグロスの皆さまへ贈るこのMリーガー特集コラム。
私はTEAM雷電の3人の紹介を担当することになった。
というわけで今年の戦いを振り返りながら、各選手ごとに改めてその打ち筋・個性に注目して見て行こう。
まず雷電で最初に誰を取り上げようかな、と考えてみたが…
“強気のヴィーナス”
黒沢咲選手を外すわけにはいかない。
おそらく、Mリーグで最も株を上げた選手の一人だろう。
開幕当初はルールへの適応に戸惑っていたが、11月に入ってからはポイントを稼ぎまくり、一時は個人成績首位にまで躍り出た。
序盤は最下位だった雷電を、3位まで浮上させた原動力とも言えるだろう。
そんな黒沢の特徴といえば、一大旋風を巻き起こした
「セレブ打法」
である。
その特徴が最もよく表れている一局を見てみよう。
11月20日(火) 第1試合
親番でこの配牌から、を残して打。
「くだらない愚形ターツは不要です!」
とペンチャンをバッサリ切り捨てていく。
スルスルと手が進み、狙い通りに三面張でテンパイ。
親番で赤が1枚、待ちは絶好の三面張。迷わずリーチと行くだろう。
そう、庶民ならリーチのはずなのだが…
「このテンパイ、なんか気に入りませんわ」
セレブな黒沢は、これをリーチしなかった!
どうやらタンヤオにならないのがご不満だった模様。
「まぁ、これで妥協しましょうか」
を引いてタンピンに変化してからリーチ。
あわよくばを引いて三色まで見ようとしていたのだろうか?
一瞬の躊躇さえ恐ろしく感じられる。
難なくをツモり、裏も乗せて6000オール。
考えうる限りの最高形に仕上げてみせた。
麻雀打ちなら誰もが思う「手牌があんな風になったらいいな」という理想。
黒沢は、その理想をいとも簡単に作り上げてしまうのだ。
観戦する側は、常にワクワクが止まらない。
もちろん、これはセレブ打法のほんの一部に過ぎない。
いきなりドラ暗刻のダブリーを打ったり…
ドラ待ちのシャンポンを一発でツモったり…
数え上げればキリがないほど、そのセレブっぷりを見せつけてきた。
しかし、黒沢はただセレブ打法のみで勝っているわけではない。
「セレブ打法」の陰には、徹底した胆力と緻密な守備力が隠されているのだ。
11月30日(金) 第1試合
たとえばこの手牌。役牌のとが対子で、しかもドラも対子。
庶民なら鳴いて満貫を目指すだろう。
しかし、黒沢は鳴かない。
その先にあるセレブなアガリを目指すため、ここは我慢する局面なのだ。