麻雀最強戦2019
全日本プロ代表決定戦
完全燃焼はできたのか⁉︎
麻雀界のニュースターを阻む
大舞台での打牌選択
【A卓】担当記者:山﨑和也 2019年9月15日(日)
麻雀最強戦は各ブロックで代表決定戦が進行中。9月15日(日)に行われたのは全日本プロ代表決定戦だ。予選300人の中から激戦を勝ち上がってきた8人が代表ひと枠をかけて争う。ではA卓の選手を見ていこう。
稲毛千佳子(麻将連合)
まずは紅一点、稲毛千佳子。彼女は4年前にも代表戦に出場したが、ノー和了の4着で舞台を去った。「何をしに行ったのかよくわからない状態で終わった」というコメントを残し、悔しさをにじませる。たしかにそれでは人形と変わらない。4年前の忘れ物を取りにきたといったところか。
また、稲毛は第11回μレディースオープンで優勝を果たしている。本人いわく現在確変中とのことだ。カチコミが決まるかどうか。
鈴木誠(日本プロ麻雀連盟)
爽やかイケメンの23歳。初めてなりたいと思った職業が麻雀プロだったという。さらに麻雀に生かせるかもという理由で大学は心理学部を専攻。チャラい見た目に反してストイックな一面を持つ。雀風は「現代と昭和の打ち方をハイブリッドさせたもの」とのことだ。伊藤優孝、前原雄大、荒正義の名前を挙げて、「超ベテランの方たちは大好きです」と白い歯を見せる。
箭内健次郎(日本プロ麻雀協会)
名字は「やない」と読む。このできる見た目はまさしく本物で、普段はIT関連の仕事をしているそうだ。web開発、web広告の運用、コンサルティング……インタビューで彼の口から出た単語はサラリーマンと何ら変わらない。また、時々モデルもやっているとのこと。なんとも多彩だ。そしてプロ歴は1年目。ジャイアント・キリングなるか。
古本和宏(日本プロ麻雀連盟)
事前のインタビューで「自分の人生はツイている」と不敵な笑みを浮かべた古本。家族や周りの環境に恵まれたとのこと。なんでも地元の有名企業を退社して上京したそうだ。出身が同じ福岡である小島武夫に憧れてこの世界に入ったとのことで、見る者を興奮させる麻雀を見せたいと語った。
いかがだっただろうか。A卓はベテランと中堅、新鋭が入り乱れる構図となった。各々の麻雀をまだ見たことがないという方も多いだろう。スターだって最初は誰でも無名選手だ。未来のヒーローたちはどのような麻雀を見せてくれるのか。
迎えた東一局。
まずは西家の稲毛がカン待ちで先制リーチ。文字通りのカチコみだ。これに対し止まったのは親の箭内。
を切れば待ちのテンパイだが、箭内は小考の末打。
は比較的切りやすいようにも見えたが、がすでに2枚出ているのを嫌ったか。
それにしても考える姿が男前だ。どこか内川幸太郎プロを思わせる。箭内ファン急増中だろう。その後、下図の形になり追っかけリーチ。
待ちは。結果論ではあるが、入り目の通り、あそこで即切りリーチをしていればアガっていた。遅ればせながら、この待ちなら勝負できると踏んだか。
メンタリスト鈴木も追いかける。こちらはとのシャンポン待ちのダマ。3人がぶつかった開幕局。結果は……。
箭内がをつかみ、稲毛への放銃となった。箭内は悔やまれるところとなったが、これが麻雀でもある。しかも…
裏がふたつ乗ってしまう。リーチ一盃口ドラ2の満貫となり、稲毛が一歩リード。
心なしか安堵した表情のようにも見える。プロ歴の長い(はず)稲毛でさえこの大舞台に立つのはそう多くない。緊張がつきまとう中でいつものように打てるかは非常に難しい。
東二局。痛恨の放銃となった箭内は点棒を取り返したいところ。
待ちの両面テンパイを入れ先制リーチ。2000点ではあるが俺だって裏がふたつ乗れば。しかしなかなかツモらない。
三段目に差し掛かって鈴木も十分形となった。開始から鈴木は手さばきもおぼつかず、どこか緊張していた様子だったが、「リーチ」の発生を入れたことで卓上に集中できたかもしれない。「ポン」でも「チー」でもいい。何か声に出すことで吹っ切れることができる。待ちは。
ああっとまたも箭内がつかむ。それも一発。リーチした上での勝負なので仕方がないのだが、
再び裏がふたつ乗るとはどういうことだろう。一盃口の神様が箭内に往復ビンタだ。今度は跳満の放銃となり、箭内は早くも追い込まれた。この晴れの舞台でいつもどおり打てなくなるのはつらい。
さすがにうつむく箭内。稲毛に続いて鈴木もリードを奪った。
東三局はじっくりした展開となり、親の稲毛が終盤でこの手格好。楽観派の方なら6000オールまで見えるぞなんて思うかもしれない。なお、全員にテンパイは入っていないものの、箭内がピンズの染めに見える捨て牌。
稲毛はを切って降りた。もピンズも危ないと見たのだ。上位2着までが決勝卓に行けるシステムだからこその選択だろう。余談ですがマニキュア素敵ですね。この局は古本が形式テンパイを入れての一人テンパイ。
稲毛はこの局でもそうだったが、守備の意識が目立った。それが吉と出ることもあれば凶となることもある。それを見逃さない者もいる。目下のライバルである古本は食い下がった。稲毛を追い落とすために。
東四局一本場ではトップ目の鈴木が前に出た。ペン三の待ちは頼りないが、現状の点数では不安を残すことになるという判断である。稲毛とは対象的に攻めの姿勢を見せた。
結果は流局で実らなかったものの、卓上に緊張感を与えたことは間違いない。また、箭内も死にものぐるいでテンパイを入れて食い下がった。
東四局は全体を通して我慢比べが続いた。三本場となり、場には供託が2本。是が非でも奪いたいところで稲毛がこの形。を切れば平和のテンパイだ。
えいやっ、と稲毛はカチコむリーチ。筆者のようなリー棒ドロボーの精神を持つ人間であればこっそりとダマテンを入れたくなるところだ。なんだか稲毛が男らしく見えてきた。
リーチなら仕方がないと、場も対応する。鈴木もひっそりとテンパイを入れてまたも流局に。供託は3本になった。
東四局四本場。さっきはリーチして流れちゃったわね。なら今度はこうよ。の平和テンパイをダマにした。たしかにリーチしたら相当出なさそうな待ちである。
点棒の少ない箭内も勝負形。を切って純チャンが見える形になった。
親の鈴木もこの手格好。待ちのテンパイが入った。稲毛がリーチをしていても変わらなかったかもしれないが、結果的に3人がぶつかることに。稲毛と鈴木はほぼ最終形のテンパイで優雅な立ち位置だが、箭内は打点が必要だ。イーシャンテンのままもがく。
手にしたツモは。そこかいな。純チャンがなくなる形になるので不満ではあるが、もう巡目も深い。
しぶしぶ待ちのテンパイをとってリーチ。
リーチ後、すぐに稲毛が持ってきたのは通っていない。
ここは譲れない。押す。
その直後に鈴木にも無筋のがきた。ドラそばだ。
メンタリストの特殊能力を発揮するときか。
冗談はさておいて鈴木も押した。箭内にとっては「おいおいおい」といったところかもしれない。もう誰も引かない。結果は………。
稲毛が箭内の当たり牌、をつかんだ。
2000点。打点こそ小さいため箭内は不満ではあっただろうが、とりあえずひとアガリを決めた。反対に稲毛は地味に痛いダメージを追った。自身の手がアガれていれば、供託を拾えていればガラリと違った展開になっていただろう。こうして長い東場が終わった。