ポンしている。
白鳥、すかさずこれをカン。
リンシャンでツモればリンシャン・チンイツ・ドラドラで倍満だ。
ここではツモれなかったが……新ドラが!
ドラが4枚乗るという僥倖。
白鳥の手はチンイツドラ6、三倍満という超大物手に化けた。
これならツモはおろか、どこから出てもトップ確定。
もちろん他からは出ないので、あとは牌山との勝負となる。
ドラが4枚増えるという願ってもない追い風が吹いた。
山にはアガリ牌が1枚残っている。
そして白鳥は1200人超の中から頂点へとたどり着いた「發王位」。
この男なら最後のも・・・
引いてくれる!
「タン!」と、小気味よい音が卓上に響いた。
Mリーグ史上3例目となる三倍満ツモで、逆転トップ。
このアガリによって、白鳥は24000点を加点しただけでなく、順位点もマイナス30からプラス50へと変えた。
つまりこのアガリは、差し引き104000点の価値、ということになる。
会心のアガリに、控え室では仲間たちもこの喜びようだ。
(※渋谷ABEMAS twitterより)
さすがにこの勝利には、白鳥本人も笑うしかない、といったところか
確かに三倍満ツモは劇的だった。
ただ、白鳥がこの初アガリを手にするまで、しっかりと我慢を重ねていたことも見逃せない。
東1局の親番、小林の5巡目リーチに対して受けていた白鳥は、テンパイルートを断たずに粘り、16巡目にはいったんテンパイを取れる形にまで持ち込んでいた。
親番であれば連荘狙いで勝負をするという人もいるかもしれないが、白鳥はこのテンパイを外す。
内川が強い牌を打って押し返してきていたこともあり、ドラも赤もない白鳥は、打点や待ち、親権維持を含めても、リスクとリターンが見合わないと判断したのだろう。
東2局2本場でも、先制のシャンポンテンパイで軽々にリーチを打たず、好形への変化を探っていたところでリーチを受け、守備に重きを置いた選択。
は瀬戸熊のリーチへ一発放銃となる牌だった。
南2局では早々に安パイを抱えて守備気味に手を進め、仕掛けた親の小林がほしかったを絞りきって放銃を回避している。
もちろん行くべき局面では前に出て、それゆえ放銃した場面もあったが、白鳥が道中の厳しい局面で辛抱し、失点を最小限に抑えてきたからこそ、最後の爆発、そして勝利があったと言ってもいいかもしれない。
麻雀は、運で勝てることもある。
この日、オーラスにマンズの一色手が入ったこと、そしてカンドラが4枚も乗ったことは、白鳥にとっては確かに幸運だった。
しかしその幸運を生かせたのは、彼自身が試合を通じ、訪れた運を結果に結びつける麻雀を打っていたからに他ならない。
タイトルを手にした者の強さをひしひしと感じた、驚愕の逆転劇だった。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。