パイレーツのセミファイナル開幕2連勝をもたらした未完の大器・瑞原明奈の進化【熱論!Mリーグ】担当記者:渡邉浩史郎

切りリーチ!!

選択肢としては

切りダマ

切りリーチ

の二択であろう。それぞれのメリットデメリットを考えると

 

切りダマ

メリット:ダマテン跳満、ツモって倍満。場にドラを切らずに済む。

デメリット:が出アガリで期待できる牌ではない。ダマテンで進めることである程度子供に自由に打たせてしまう。ツモ切りで河がどんどん派手になる(=七対子等のダマテンをケアされやすくなる)。

 

切りリーチ

メリット:待ちごろので出アガリ跳満。リーチによる子供の手牌進行の遅れ。変則手に絞らせない(むしろ七対子らしさを消せる)

デメリット:を鳴かれて押し返される可能性。リーチによりまでもが止まってしまう可能性。

 

といったところだろうか。

ここで対局メンバーを見てみよう。前原、茅森、瀬戸熊と重厚な打ち手が揃っている。

瀬戸熊、前原はいうまでもなく字牌ドラの扱いが重い打ち手だ。親の変則的な河を見て、ドラのをテンパイからでも止めてくることが容易に想像できる。茅森も打点を絡める打ち手であり、容易にドラは出てこない。

そう考えると、やはり待ちでのメリットはかなり少ないと言えよう。ダマテンだからと言って容易にドラを切ってくれる打ち手たちではない以上、素直にアガリ率が高い選択をした形だ。

これに飛び込んでしまったのが茅森。

瑞原のツモ切りと自身の手で赤が三枚全部、ドラが二枚見えてしまった。ドラ切りリーチということもあり、こので打って高いケースは余り多くない、そう踏んでの押しだったのだろう。

しかしレアケースとも言える、早い巡目で打点が足りており、アガリ率を求めた故の単騎。更に裏も乗り、リーチ・ホンイチ・七対子・裏裏の倍満。24000だ!

これで持ち点50000点を超える、大きなアドバンテージを得た瑞原。

このアガリを活かして見事にトップを取り切った……

と綺麗に締めたいところだが、実はもう一つ、アドバンテージを得てからの舵取りに素晴らしい選択が存在した。それを見ていこう。

【南1局】

得点を少し減らして南入。二着目である前原の親番だ、ここはなんとしても流しておきたいところ。

おあつらえ向きに第一ツモでを暗刻にする。攻守兼用で嬉しさ満点の自風だ。

次巡を引いてきて、打

……

テンパイスピードだけならの一手だろう。が横に伸びた両面を逃す理由がない。

次巡引いてきたのは……

これはもしかして……

暗刻ちゃん打法!!

確かに暗刻・対子効率であれば、端牌の方が後に待ちになった時に優秀だ。

安全度だけでなく、こうした暗刻手・対子手の打点意識も含めての選択だったのであろうか。

この局、瑞原はさらなる加点を目指している。うっすら感じられた、その意志が表面化したのは7巡目。

6巡目、見事に七対子のテンパイを入れた瑞原。(対子ちゃん)

次巡、茅森がこの仕掛け出しで満貫のイーシャンテン。他家から見ても、ラス目の茅森の仕掛けということもあり、打点を伴っていることが予想されるだろう。

同巡、を引いた瑞原は……

リーチ!!

高打点が予想される茅森の仕掛け、切り出しが濃い親の前原に、今切られた絶好の待ちでぶつけていった。

当然リスクを伴う選択であり、失敗したときのダメージは計り知れない。

恐らくだが、Mリーグ2019が始まった時の瑞原ならダマテンにしていたのではないだろうか。

「ここでダマテンにしてトップを取れるほどMリーグは甘くなかった。十分勝算があるこの手この待ちなら決めに行かなくちゃ」

レギュラーシーズンという荒波を乗り越えていった中で、そういった心境の変化があったのかもしれない。

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