ほどなくをツモって打。待ちでダマテン続行だ。瀬戸熊の親を流せば相当有利になるし、瀬戸熊は間違いなく引かないので、リーチをかけないのは賢明な判断だろう。
対して瀬戸熊はようやく1歩前進したくらいで、ほとんど配牌時から変化していなかった。
「絶望だ雷電」。金プロが苦しげにつぶやく。この手を仕上げないと道はない。
しかし、瀬戸熊の読みは秀逸だった。、を引いてテンパイ。を切ってドラ単騎リーチをかけた。
あの苦しかった状況から先制リーチを打つことに成功した。さあどうなる。
石橋の手が止まった。
を持ってきたのだ。対面の瀬戸熊の河を見る限り、まったく通っていない。
「ドラ跨ぎですよね」(解説の山井弘プロ)
「これ行かないんじゃないすか」(金プロ)
「しかも4枚目」(山井プロ)
「撤退?」と筆者と小林未沙アナの声がかぶる。
「これは基本やめると思います」(金プロ)
もしを打って放銃したら。を打たないで瀬戸熊にアガられたら。どっちだ。
いやしかしダマにしていたのだ。こういう危険牌を持ったらオリるはず。
押した!
「うーわー」と驚きの声が画面に響き渡る。
ここを終わらせたらPiratesの勝ちが濃厚と見ての決死の一着だ。普段だったら打たなかったかもしれないが、これが条件戦か。勝負どころで見せた踏み込みに痺れた。筆者の見たかった光景がそこにはあった。
しかし瀬戸熊のトルネードも見たい。
石橋の強気な姿勢も実ってほしい。どっちも応援したい。もう見ていられない。
決着がついた。瀬戸熊が石橋の当たり牌であるを掴み、石橋に軍配が上がったのだった。
あまりにも大きな3900点。大きな大きなアガりであった。強過ぎる石橋。
放銃直後の瀬戸熊は何かを悟ったような様子だった。やるだけのことはやったが、あと1歩届かなかった。
オーラス。しばらく虚無の感情でいた筆者だったが、興奮を取り戻すことができた。
3位の白鳥がこの手でリーチ。3巡目なのと待ちが役牌のダブルバックなのでそこそこアガれそうに思える。ただこのときは着順確定のリーチに思っていた。ああ、この局も終わってしまうのだなあとぼんやりしていた。
石橋はしばし手牌を見つめてから山に手を伸ばした。おそらくチーを考えていたのだと推測する。チーをすると自分の手がかなりアガリづらくなる代わりに一発を消すことができる。跳満ツモでアウトという条件であるため、チーもなくはない状況であった。実戦のスルーは放銃を避けるほうが大事という判断だ。
瀬戸熊の手はこちら。……厳しい。四暗刻でどうかという局面。現実的なラインだと七対子ドラ2の手に仕上げ、石橋からアガるという選択肢、白鳥から満貫を直撃して3着に上がるという選択肢もある。
筆者だと自分の手があまりにも先が見えないため、考えるのも放棄してしまいそうだが、瀬戸熊はわずかな可能性を模索した。
を持ってきて手が止まる。切る牌が難しい。は白鳥の当たり牌だ。
ここからを抜いた。七対子の未来からは離れてしまうが、石橋が白鳥に放銃して着順を落とすというコースがまだあった。さすがにこの手から攻めるのは得策ではない。
実際、石橋は小考を重ねており、ややオリるのに苦労しているような印象があった。左にが浮いている。もし放銃して5200点を失うと、近藤と同着だ。裏が乗ると大変なことになる。まだ勝負はわからない。
「けっこう危ないですよ」と金プロ。
つまりを切るかもしれないというのだ。やめてくれっ。このままトップでいこうじゃないかPirates。さっきで勝負はついたじゃないか。
「あっ!」小林アナが大きな声を上げた。
に一瞬手をかけたのだ。
「いや、いや本当に危ないですよ」(金プロ)
隣のを選んだ。セーフ!ただ、まだ危ない。
「次はですね」