「マツ、楽しかったな」Mリーガー松本吉弘が書き下ろす最強戦敗戦記


文・松本吉弘

『最強位』
麻雀プロなら誰もが憧れるビッグタイトル。
年に1回だけ開催され、数え切れない参加者がプロ予選やアマチュア予選やトーナメントで勝ち抜いた者だけでファイナルを行い、勝ち残ったただ一人が得られる称号だ。

僕は5月10日に行われた「麻雀最強戦2020最強の麻雀戦術本プロ決戦」というシリーズのトーナメントB卓に出場した。

Mリーグではよく顔を合わせる面々だが、構図としてはアベマズvsパイレーツ。
特に白鳥さんと大舞台で闘うのはRTD以来、Mリーグが始まってから無かったので、対戦表を観た時、心が踊った。

白鳥翔という人間は麻雀プロ、チーム関係無しに、信頼し、尊敬し、何より1番勝ちたい相手だ。麻雀の疑問はいつもお互いぶつけ合い、自分の麻雀のモチベーション、原動力はいつもこの人に突き動かされていた。
そんな人だからこそ、最高のパフォーマンスを出し切り、最高の試合にしたかった。

新型コロナウイルスの影響で1ヶ月以上牌を触れることなく、本番が近づくにつれて不安と緊張が増す。こんなにも牌を触らなかったのは麻雀を覚えて初めての経験だ。振り払うようにネット麻雀を打ち続けた。

そして迎えた当日。始まるギリギリまで不安はかき消せなかった。
いつものように運営スタッフ、解説陣、選手と挨拶し、A卓の試合を見守る。
不安とワクワクが同居する中で、自分の出番の直前にはもう爆発寸前だった。

そして遂に試合開始、恒例の登場から席に着く。

なんとも言えない配牌だ。
うまく行けばタンピンドラ1くらいまでは見込めるが、正に今の自分の心情を表してるような配牌。

2着抜けとは言え、序盤リードは後半有利に働くので東場は大物手を目指す。

巡目が進んで朝倉プロがオタ風のをポンして萬子を連打し、ホンイツ気配。自分の手はタンピンドラかタンピン一盃口が見える2向聴。 相手の色と危険度、アガリを見つつ手を進める。

そして11巡目

索子の辺張を払い、字牌絡みに見える朝倉プロからが打たれる。の手出しがあるが、の辺張落としの最中に引いただと思ったので、本線は索子の一色。ダブホンイツなど?
チーすればタンヤオの1向聴に取れるが、スルー。
チーした場合は
チー
となり、
の1向聴にはなるが、は7枚見え、も1枚見えずつ。そして白鳥プロ石橋プロの両名からはドラが見えない限りは聴牌しても出和了が見込みにくい。
何よりこの手はまだ高打点の目があり、チーしたところで次の字牌で降りに回ることになるので、朝倉プロの手は異様ではあるが、聴牌粘りを考えてもスルーのが良いと判断した。

生牌を引いて困っていたが、重ねてついに聴牌。


待ち取りは上記の通りは大量に切れているため、変則3面張の待ち。

問題はリーチに行くかどうか。

は山にあるかどうかはわからないが、石橋プロ白鳥プロ共に引き気味の進行で字を既に抑えている場合もある。
は朝倉プロの現物でもあるにも関わらず引き気味の両名からは打たれていない。
体感は山に3枚くらいと思っていた。僕の選択は

『リーチ!』

2着抜け、東1局ではあるが、1人に大物手を決められ、残りの1席を3人で奪い合う展開がとても嫌だった。

そして相手は大物手だが待ち取りは苦しいはず、自分の手の待ちの強さ、アガリを考えても悪い勝負じゃないと思った。

何より自分の最大の持ち味はシンプルな攻めだと思っており、最近はこねくり回しているんじゃないか?今日はシンプルに強く行こうと思って臨んでいた。

相手は山にが一枚残りの大四喜和だった。

こちらは想定通り山に4枚居た。
だがーーーーーーー

麻雀はそんなうまく行くものではなく、数巡後、を掴み48000放銃。

この局のことは色んな人に聞いてみた。
ダマテンに構える人も、リーチの人もいた。
ダマテン派の話を聞くたびに恥ずかしくなって落ち込んだり、リーチ派の人の話を聞いて自分は間違いじゃなかったと励ますカッコ悪い自分がいた。

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