名もなき麻雀プロたちが
見せた極上のドラマ
大塚翼、
泥にまみれながらも
つかんだ勝利
【決勝卓】担当記者:東川亮 2022年11月13日(日)
こちらは、今年の麻雀最強戦「全日本プロ選手権」の予選を勝ち上がり、ABEMAの放送卓へ駒を進めた8名である。
正直に書く。筆者が名前を知っていたのは1人だけだった。おそらく、同じような人がほとんどだろう。
今や麻雀プロは2000人以上いると言われ、昨今の麻雀人気(Mリーグ人気)によって、その数はますます増えている。当然、そのなかの大半は無名のプロたちだ。だが、トッププロだって最初は無名だった。スポットライトが当たらないところでも研鑽を続け、数少ないチャンスをものにしたから、今がある。
麻雀最強戦「全日本プロ選手権」は、麻雀プロとして歩むことを決意した者に、等しくチャンスを用意している。今回勝ち上がった8名は、そのチャンスを自らの腕だけでつかみ取ろうとしている。勝ってスターダムにのし上がるチャンスをつかめるのは、たった一人。
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田本英輔(たもと えいすけ)
予選A卓では南2局の満貫ツモでラス目からトップまで浮上し、そのまま逃げ切った。自身をプロの世界へ誘った最強戦FINALの舞台まであと一つ、プロ歴3ヵ月の若者が頂へと挑む。
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大塚翼(おおつか つばさ)
3者が横並びとなったオーラスを制し、2位通過で決勝卓へ駒を進めた。この日の朝に染めてきたという頭髪のように、勝利への意欲は真っ赤に燃えている。トップ取りの決勝卓で、この男が見せる選択やいかに。
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吉田昇平(よしだ しょうへい)
予選B卓は序盤から大物手を決めてリードを広げると、自らの手で局をつぶして1位通過を決めた。より強い相手を求めてプロになった男、願う舞台はこの戦いの先にある。
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新野竜太(しんの りゅうた)
B卓では競り合いを制して2位に食い込み、決勝卓に進出。プロ歴は8年ながら、アマチュア時代から麻雀最強戦へのチャレンジを続けてきただけに、この舞台に懸ける思いはひとしおだろう。あとはもう、勝つしかない。
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麻雀界で、何者かになるために。
今はまだ、何者でもない麻雀プロたちの戦いが始まる。
大塚翼、河に仕掛けた狡猾な罠
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開局から田本が加点し、迎えた東4局。親番の大塚が8巡目でテンパイする。ピンフのみだが、リーチしてアガれれば、裏ドラ次第ではそこそこの打点になり、田本追撃の1番手に名乗りを挙げることになる。
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もちろんテンパイは取るのだが、ここはダマテンとした。引きならイーペーコー、
引きならさらにタンヤオがついて2翻アップする。劣勢の状況で、打点アップの可能性は残したい。
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でツモ・・・らない。
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を切ってのフリテンリーチを敢行した。一連の動作はあまりにスムーズで、このパターンを最初のテンパイ形で準備していたことが見て取れる。そもそも、ここでツモるくらいなら最初からリーチをかけていたはずだ。
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結果は2人テンパイで流局。大塚の手を、田本がいぶかしげにのぞき込んでいた。
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蝶ネクタイにストライプのシャツ、赤いサスペンダーに赤い髪。くせ者感がすごいこの男は次局、さらにやってくる。
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東4局1本場、4巡目の引きは絶好。雀頭探しが始まるところで、大塚は孤立の
を離し、
のターツを残した。
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次巡、を引いて
切り。カン
引きでのテンパイが消える、少々ロスのある選択だ。
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もちろん、それは承知の上。代償を払って得たのは、単騎待ちのアガリやすさだ。
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手出しからの
ターツ落としでリーチ。
はかなり通りそうに見える。田本は追撃をケアする意味で大塚の現物發を温存し、
から切り出していってしまった。
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あまりに鮮やかな、大塚の吊り出し。リーチ一発ドラ、7700は8000が与えたダメージは、打点以上に大きい。
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大塚はさらに、2000は2200オール、4000は4300オールと、ツモアガリでライバルたちをぐんぐんと引き離す。このまま、勝負は決まってしまうのか。
田本英輔、打点にこだわる意識
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東4局4本場
田本の手は4トイツながらマンズでメンツもできているというところで、を引いた。チートイツにイーペーコー、あるいはホンイツなど、いろいろな手役が見える形。
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田本の選択はトイツ手を見切る切り。