大海原に咲く一輪の桜　朝倉康心と岡田紗佳、長い冬を超えた2人の戦士【熱論！Mリーグ／FS３日目】担当記者：真中彰司

オーラスの親番に勝負を託すために、2000点で近藤の親を流す。

南3局

多井の親番だが、先にテンパイを入れたのは近藤。

2着確保に向けてリーチを放つ。

かたや劣勢の岡田は、ペンのテンパイを取らずに打。

引きから望める変化も取りこぼしたくない。

(引き→か引きでタンピン三色)

そこでを引き入れるも、手詰まってしまった多井。

近藤の現物を打つと、手を壊すことになる。

記憶の糸を手繰り、何とかヒントをつかもうとする。

数十秒の間をおいて、打ち出されたのは。

が5枚見えで薄く、またタンヤオで動ける方が有利と見たか。

しかしそこに、またしても岡田のリーチが入る。

ペンもフリテンも拒否して、4枚目のを引き入れての待ち。

多井に一発で満貫を放銃しても、朝倉に16000オールを引かれても、めげずに戦い続ける。

何度でも、何度でも。

「もうやるしかない！ここで行かないで、いつ行くのよ！」

その瞳にはまだ桜色の炎が宿っていた。

彼女はプロ雀士の中で5本の指に入る負けず嫌いだと、私は思っている。

女だからって、モデルだからって、「麻雀をナメている」とは、絶対に思われたくない。

チーム練習はもちろんだが、それ以外でも常に努力を続けてきた。

多忙な仕事の合間を縫って、渋谷の八角形のリングで練習を重ねた。

初登板の直前も、そしてこの試合の前日も。

努力が必ず報われるとは限らない。

しかし、この時ほど努力が報われてほしいと思ったことはなかっただろう。

目には見えないが、その「努力」が近藤にを掴ませたのかもしれない。

やっと生まれた、会心のアガリ。卓上に桜が咲き誇る。

南4局

ついに迎えた、最後の親番。こうなったらもう、最後まで突っ走るだけだ。

を暗槓して一気に打点を上げに行く。

朝倉は危険を察知して、岡田の欲しいを川に並べていく。

が残ると厳しいか…と思われたその刹那。

「自分で引けば問題ない！私の道は私が切り開く！」

なんと薄い方のを引き入れ、ソーズ5面張でリーチ。

こんな状況、一発ツモ以外ありえない！

最高の4000オールで多井と近藤を引き離す。

南4局1本場

連荘に成功し、静かに一呼吸おく岡田。

そして唇をキュッと結び、また卓上へと神経を集中させる。

「いったん落ち着いて…よし、もう1度いこう！」

これまでの岡田は、Mリーグという大舞台の重圧で、冷静さを欠いていた部分があった。

それ故に、ミスもたくさん犯した。