目くらましの陰に潜ませた毒 山本ひかる、変幻自在の鳴き麻雀【 #麻雀最強戦2023 】 最強&インフルエンサー決戦 観戦記【B卓】担当 #東川亮

目くらましの陰に潜ませた毒
山本ひかる
変幻自在の鳴き麻雀

【B卓】担当記者:東川亮 2023年4月8日(土)

麻雀プロとしての価値は、何をもって問われるのか。
他を上回る実力か、それとも人の耳目を集め、麻雀を広く伝える発信力か。
もちろん両方を兼ね備えているのがベストだが、そうではない場合、より重きが置かれるのはどちらなのか。

麻雀最強戦2023「麻雀最強戦 最強&インフルエンサー決戦」は、近年の麻雀界における大きなテーマと向き合うかのような組み合わせとなった。最強とされるタイトルホルダー4名は、インフルエンサーを圧倒する内容、そして結果が求められる。そしてインフルエンサーも麻雀プロという肩書きを持つ以上、相応の力を見せつけなければならない。ある意味で、今年の麻雀最強戦における、最も残酷な大会だと感じた。

本記事では、B卓の模様をお届けする。
卓を囲めば実績も発信力も関係なく全員が平等、そのなかで次のステージへと挑めた者は。

安藤りな(日本プロ麻雀連盟)
日本プロ麻雀連盟北海道支部の秘蔵っ子で、2022年には女性のプロアマタイトル「てんパイクイーン」で初優勝。華やかなルックスに加え情報発信の意識も高く、今後を嘱望される打ち手である。入場時には自身だけでなく同卓者のTwitterアカウントを手に持って登場した。

安藤は、東1局に恵まれた手牌をもらうと、リャンメンターツを外しての3メンチャンリーチを一発でツモってハネ満。いきなりの大物手でリードを広げる。もちろん、このアガリで対局が有利になるのは間違いない。
一方でセーフティーリードでもなく、他3者にも反撃の機会は十分に残されている。

白銀紗希(日本プロ麻雀連盟)
所属団体の女性プロの頂点である、第17期女流桜花。実力は証明済、さらに先日はYouTubeで、女流桜花の賞金90万円を競艇につぎ込むという驚きの模様が公開された。競艇を通じて身につけたという「最後の1牌を押す勇気」で、ファイナル進出を目指す。

競艇では大勝負をかけた白銀だったが、毎回そんなことをしていてはいずれ破滅してしまう。リャンメン2つの1シャンテンだったところに【9ピン】を引いて打【7ピン】タンヤオイーペーコーが消えて打点的メリットは下がるが、受け入れ枚数はこちらの方が多く、まずは軽く1ベット、ここはシンプルにアガリを目指した。

ドラ【2ピン】を引いてリーチをかけ、ほどなくツモアガリ。1300-2600の打点で2番手に浮上。しかしもちろん、このまますんなりと行く最強戦ではない。

西嶋千春(最高位戦日本プロ麻雀協会)
第22期女優最高位。これが4度目の戴冠であり、麻雀の実績に関しては今回出場する8名のなかでは突出している。今回の麻雀最強戦は、強さの価値を証明するためにも負けられない戦いだ。入場時のポーズにも、あえて上から構えて叩きつぶしてやろうという意志が見える、と書いたら大げさか。

東4局、西嶋はペン【7マン】ターツを引っ張って1シャンテンをキープし、【7マン】からツモって【3ソウ】【6ソウ】待ちのリャンメン待ちリーチをかける。

他2人がリーチに対応するなか、白銀は最後まで戦うに見合う大物手が仕上がろうとしていたが、

ここは西嶋がドラの【3ソウ】をツモって1300-2600。先行した安藤をタイトルホルダー2名が追いかける展開で、東場は終了した。

南場に入った段階で、アガリがないのは彼女だけだった。

山本ひかる(RMU)
有名特撮シリーズのヒロインを務めるなど、芸能界で役者として長く活躍してきた人物。芸能生活においてはオーディションなどで多くの仕事を決めてきたとあり、欲しいものは自分の力で掴みとらなければならないこと、そしてそれができる自信と覚悟を持っている打ち手だ。

東場はアガリがなかった山本だが、興味深い仕掛けを見せた局があった。
【1ソウ】【2ソウ】【4ソウ】【6ソウ】【7ソウ】【8ソウ】【9ソウ】とあって一気通貫を見たい手牌に見えたが、4巡目に【1ソウ】を切って次巡カン【3ソウ】をチー、【9マン】のトイツ落とし。タンヤオへの移行だが、いわゆる「遠くて安い鳴き」だ。一連の動作によどみはなく、山本の意志が伝わってくる。

南1局、親番の山本は3巡目に【8ピン】を暗槓。手牌は雀頭のない1シャンテンだが、テンパイについてはどうにでもなりそうな形だ。暗槓つき親リーチは相手にとっては厄介なことこの上ない。

【5ソウ】チー。これには驚いた。もちろん一手進んでテンパイにはなるのだが、リーチをかければ一撃が狙えそうな手を、タンヤオのみ2000点のテンパイにとるのは、見ている側からしたら損な選択に見える。

ただ、山本の手の内が見えない同卓者からすれば、これは不気味だ。ドラを複数抱えたタンヤオにでも放銃すれば厳しい状況になってしまうため、受け気味の選択を強いられる。

山本がツモ、700オール。これが序章だった。

南1局1本場【中】ドラ1、3900は4200を西嶋から出アガリ。宣言牌の【6ピン】は先行リーチの安藤の中スジ、そして自身はリャンペーコーテンパイとあって、止められる牌ではなかった。

次局も、山本が西嶋からタンヤオのみ、1500は2100の出アガリ。西嶋としては山本がツモ切ったドラポンをして出ていく牌だったので、打点に関してはたいしたことがないのが見えていた。

打点は安い。周りからは軽視されるかもしれない。しかし、アガって連荘しているのは山本である。

南1局3本場も、1巡目が終わる前に【中】をポン。

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