「うわーっ来ちまったよ!来ちまったこの舞台で!」(日吉プロ)
ついにテンパイ。残るは。滝沢はを引いても暗刻になるが、新井と安部はいらない牌だ。しかも
安部にが入ってリーチがかかったのだ。これで安部はを引くとアウト。それ以上に危険になったのは滝沢だった。安部の捨て牌にがあるではないか。現物で通るではないか…!!
「滝沢やばい!滝沢やばい!滝沢やばい!滝沢のがやばい!」(日吉プロ)。魚谷プロと梶本プロも「やばいやばいやばい」とホラー映画でも見ているかのような小声で連呼。
先に近藤のツモ番。を引いた。役満テンパイでしかもの筋になっている。では当たらない。「これ切りますよ」「いくでしょ」。
近藤が熟考に沈んだ。あれっと筆者も思った。これは切りそうだが、時間を使っているのはなぜだろう。守備型の人ならともかく『超攻撃型プロ決戦』を制してファイナルに勝ち進んだあの近藤だ。
「ウソだろー!」(日吉プロ)
なんと親の現物待ちの条件でありながら、を引いてオリたのだ。これは筆者も思わず声を出して飛び上がってしまい、飲み物をこぼしてしまった。そのくらいの衝撃であった。
だが、状況を整理すると安部のリーチは高い手が濃厚、仮に一発がついて跳満を直撃となったらもうほとんどリードがなくなってしまう。
「勝つためにやってるわけだから。役満アガるためにやってるわけじゃないから」(梶本プロ)
なるほどこれが本当に強い人なのだと痛感させられるではないか。役満賞10万円、アース製薬商品、今後ハイライトで使われること間違いなしといった煩悩をすべて取り払って近藤は勝ちにいったのだ。
ちなみに危ないと言われていた滝沢だったが
現物のを切らずに通っていないを切るという地味に化け物じみたことをやっていた。滝沢視点からだとはテンパイのスライドにも思える行為だと神目線では語れるのだが、しっかりと国士をケアしていた。近藤の影に隠れてしまったがファインプレーといえるだろう。仮にを押されていても滝沢なら出さなかったかもしれない。
結果は安部が一発でツモ。見事じっくり手牌を育てて2000―4000の手に仕上げてみせた。タンヤオと平和をつけたのは大きい。しかし(裏がほしかったな~)という様子も見て取れた。
南3局。
親の滝沢はもうあとがない。連荘は必須といえる。
をポン。萬子に染めていくか、のバックか。なりふり構っていられない状況だ。A卓でもあの黒沢が親番で2回鳴くということもやっていたし、あとがない麻雀最強戦ならではの選手の姿は必見だ。
まとまっていたのは近藤だった。できればリーチを打たずにダマでさくっと平和くらいの手で終わらせたい。
すぐに平和でテンパイになった。待ちは。山にはなんと8枚!とあって勝負あり。
滝沢もここまで進めて、は吸収できる手になっていたのだが、近藤が終盤でツモって局を終わらせた。
これで実質近藤は勝ち抜けとなった。滝沢は親を落とされて非常に厳しくなってしまった。
南4局。
安部はどこまでもアガっていきたい。新井との差は約1万点。満貫ツモでひっくり返る。
配牌はドラを2枚抱えているが、テンパイまでは時間がかかりそうだ。
安部にとって最悪なのは他家にアガられて局が終わってしまうこと。今にも早そうだったのは近藤だった。が対子であり、いくら門前派の近藤でも光の速さでポンするだろう。
新井もツモ次第といったところか。2着以上でいいので、平和のみでOKだ。ただ、理想はタンヤオにして、近藤との結託(チーさせてもらう)でアガることだろう。
近藤がをポン。打でかなりまとまっているように他家から見える。
安部はもう時間はないと見てを両面でチー。
ドラのもポン。2副露してなお頭すらない状況だが、周りからは12000点の手となっている。これで近藤、新井は安部になおさら打てない状況となった。特に新井はゲームセット級だ。
近藤に待ちのテンパイ。しかしをポンされていて薄くなってしまっていた。
は新井の手に対子。部分的なテクニックとしては近藤に当たりそうな牌を打つ「差し込み」があるが、2副露している安部に当たるかもしれないので今回は厳しい。自身は鳴きの利かない平和手。生きた心地は到底しない。
ついに3副露目。カンチャンでを鳴いた。
ここで少し時間を使ってを切った。確かに悩ましいところなのだが、この間で相手に「もしかしてテンパイしていない?」と思わせてしまったかもしれない。テンパイなら考えずに切りそうなものだからだ。