松本は「何としてもこの試合でトップを獲りたかった」と語っていた。
冒頭の夢のことはもちろん、その後の大和証券Mリーグで選手たちが見せた闘牌も刺激になっていたという。
Mリーグという舞台で、素晴らしい打ち手と切磋琢磨する。
そうして目指す目標は人それぞれだが、松本にとっていつかたどり着き、越えなくてはならない存在が「最速最強」多井隆晴なのである。
「僕は、小島武夫先生とか安藤満プロ、飯田正人プロという、いわゆるレジェンドと呼ばれる人たちとは麻雀を打てませんでした。でも、今一緒に戦っている多井隆晴という麻雀プロは、先ほど挙げた方々と同様に何十年後も語り継がれる、一つの時代を築く最強の打ち手だと、改めて思いました。
今、僕はその伝説と同じチームなわけですけど、いつか大きな舞台でこの人に勝ちたい、1番になりたいって、すごく思うんです。もしかしたら『この人に勝たなければいけない』という自分の中での渇望が、夢に出てきたのかもしれませんね」
「お前、早く勝てよ。俺を倒してみせろ」
この話をたまたま耳にした多井は、そんな言葉を松本にかけてきたという。
「もしも同じシーンが来たら、絶対に単騎にします」
いつの日か、夢を現実とするために。
松本はこの日、目の前の最強を越えるための、新たな一歩を踏み出した。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。