なんでもないようなことが幸せだったと思う 瑞原明奈は赤い要塞とのデッドヒートを制することができたのか【Mリーグ2020観戦記１／５】担当記者：ZERO

冷静と臆病。
勇気と無謀。

これらは紙一重になる。

打が勇気か無謀かはわからないが、先手を取れたときだけ攻める…では勝ちきれないのでは…と私は感じたのだ。

この局は流局した。

東３局６本場

どこかで攻めないと勝てない。それは瑞原もわかっている。

しかしその思いを見透かしたかのように、策士・勝又が場を支配する。

をポンした勝又は

捨て牌にマンズとピンズを並べ、他家を牽制したのだ。

特に上家の瑞原はこの仕掛けに機敏に反応した。

をツモってくっつきのイーシャンテンになった瑞原の手牌。↓

瑞原はここからさして考えることなく、の対子を落としイーシャンテンを崩した。
いかに勝又をケアしているかが伝わってくる。

わかる。を鳴かれたら大三元まである上に、その後にうまくテンパイしたとしてもソウズ待ちになり、さらにソウズ（か）を打ち出さないといけない。
を鳴かれてからオリるよりは、を切る前にまわったほうが安全だ。

ただ、相手の注文を全部聞いていては攻めどきを失ってしまう。
特に勝又のような策士は何をやってくるかわからない。

先ほどと同様、優劣は難しいところだが、ともあれ瑞原はまたしても保留の選択をとったのだ。

手をこまねく他家を見ながら、勝又が悠々とツモりあげた。

1300は1900オール。

種明かしするとドラ１のペンチャン待ち。
しかし打っている相手からするとドラ色のホンイツは何点と言われるかわかったものではない。
ソニー損保が半分払ってくれるなら押すが、麻雀には保険制度はないのだ。

軍師・勝又の策が場を支配した一局だった。

東３局７本場

７本場…。

終わらない勝又の親番…。

トップ目というのはこんなにシンドイものなのか。
耐え続ける瑞原の集中力が、ふと切れた瞬間があった。

まず、再び勝又の仕掛け。

瑞原の下家でチャージし続けることにより、瑞原の攻めを制御できる。

（また赤い悪魔が仕掛けた…もういや…疲れた…）

ふと上家に合わせてしまったに瑞原は目を覚ました。↓

価値の低いクズ手なのに、勝又に対して１番鳴かれそうな牌を切ってしまったのだ！

これまでの堅守とは真逆である。

後に瑞原は
「勝又さんがテンパイだと勘違いしてしまった」
と語る。
あまりにプレッシャーを掛け続けられ、集中力を欠いたのだろう。

「ロン」

次に瑞原が切ったに和久津が声をかける。

こうして瑞原はトップ目から陥落してしまった。

右を気にして左に放銃。
このは止まりようがないが、それにしても後味の悪い放銃だ。

何局か挟み、南場の親番にチャンス手がやってきた。

南２局

ピンフドラドラの完全イーシャンテン。

これがツモれどもなかなかテンパイしない。

いつも冷静沈着な瑞原にしては、珍しくツモる手に力が入っている。
それにしても今日の髪型はクレオパトラを彷彿させる神々しさだ。