このまま立体図で進めていこう。村上の打ったを、
朝倉はチー。さえ鳴ければアガリは近い。ここは打とした。
次巡、村上は、
朝倉の仕掛けに対して、ドラのを打ち出してきた。ここからも村上の手が、冷やかし気味の構えではないことがうかがえる。
さらに動きが入る。
対面の前原がをポン。これも村上の不穏な河を見ての仕掛けであろう。
次の朝倉の手番で、
テンパイが入る。でアガれば3900は4200の手だ。だが、村上が国士をしているであろうことを考えると、待ちはいかにも心もとない。
そんな中、村上が、
手からを切ってきた。
さらに、
も手出し。
このように国士模様の人が一九字牌を余らせてきた場合には、仕掛けやリーチに打てない牌を手に留めて回っているケースや、
「余らせたように見せて他家の様子を見る」
ケースも存在する。
しかしこの局の村上は、先にドラを処理していて、さらに朝倉の仕掛けにも動じなかった。先ほど述べたように本気度の高い手であろう。これ以上中張牌を持っていることは考え難い。
となると、いよいよ一九字牌で溢れかえっているか…
卓上に緊張が走る中、二つ目のシーンがやってくる。
ここだ。朝倉がをつかんだ場面。
朝倉は、
を押した!!
このはもちろん安全牌ではない。本人もそれは分かって切っている。
朝倉は、それでも読みを入れて、
「比較的通しやすい理由がある」
から自身のアガリの可能性にかけてを勝負したのであろう。
再び立体図で見てみよう。
このは、
「村上に入っている可能性が比較的高い」
と読めるのである。
まず対面の前原は、ストレートな字牌と端牌の切り出しに続いて、の仕掛け。おそらくタンヤオであろう。は持ってなさそうだ。
下家の勝又も5巡目にを切っていて、の周辺は厚く持っていないだろう。
他の二人に薄いから、相対的に村上がを持っている可能性が上がるのである。
そして今持ってきたは2枚目。残りのがまだ2枚あると考えると、村上の手にがすでにある可能性は高いと考えられるのではないだろうか。
また、村上はテンパイしている可能性も高いが、まだ危険牌を押しておらず、100%テンパイしているわけではない。そのあたりものプッシュを後押しする。
繰り返すが、このが当たり得る牌であることは朝倉も分かっている。チームメイトの石橋は、でもやめると語っていた。安全な牌では決してない。
しかし、自身がアガれば村上の大物手をかわすことが出来る。また、勝又がしっかりと受けに回っている今、朝倉がオリてしまえば村上が楽になってしまう。
朝倉は、国士無双を相手にしても
「河から得た自分の読み」
を武器にギリギリまで踏み込んでいったのだった。
そして、このあと、
4枚目のを持ってきて、放銃回避。
を切っていったのは、万が一、他の一九字牌が全部見えたときに、を打ってタンヤオでのテンパイを組みなおそうという考えだろう。
タンヤオ濃厚とはいえ、前原に通っていないを切ったのも、
「村上が1枚はを持っている」
という読みからだ。
この局は、
前原がタンヤオの1500は1800を村上からアガり、静かな終局となった。
この後2着を死守して半荘を終えた朝倉。
試合後のインタビューで、