満貫ツモ条件ながらドラのない岡崎は、のトイツ落としで三色などの手役を狙う。
齋藤は567の三色を見るがやや遠い。
テンパイ必須の増田は、苦しい形が残ってのイーシャンテン。
誰もが、自身の可能性を追う。
テンパイ一番のりは岡崎、勝負の待ちリーチ。
三色のつくなら無条件で逆転トップ、リーチピンフのみのは、一発以外は見逃す腹だろう。
山には何と高目のだけが3枚生きていた。
アガられれば終わり、各者が無スジを突っ張る。
しかし、親の増田の手が引きで止まった。
テンパイ必須の条件を考えれば、ドラ跨ぎとは言え切ってしかるべき牌だと思えた。
だが、増田の選択は止め。
条件を考えれば、岡崎のドラ跨ぎ待ちは十分あり得ると見たか。
とはいえ、これでチーしてのテンパイは少し取りにくくなった。
目いっぱいテンパイに向かいたいが打ったら終わり、これが増田のひねり出したギリギリの選択なのだろう。
ちなみにもしを打っていたら、間違いなく尻無濱が鳴いてテンパイを入れていただろう。
その尻無濱も、端正な顔をゆがませて長考し、を押す。
とはいえ、でギブアップ。
これは巡目的に折り合いをつけた格好だろう。
自身のアガリが厳しいだけでなく、増田がノーテンなら岡崎にツモられない限り自身の勝利、増田がテンパイしていれば第2ラウンドとなる。
そこで決着をつければいい。
岡崎の最終ツモ、は山に残り2枚。
この時点で、増田はまだテンパイしていない。
ツモれば岡崎、ツモれなければ尻無濱。
積まれている牌が何かで、二人の明暗は残酷なまでに分かれる。
可能性で言えば、圧倒的に尻無濱が有利だった。
しかし、勝ったのは岡崎。
壁を乗り越え、文字通り、自らの手で勝利をつかみ取った。
最強戦でもほとんど見られない、4位からアガリ一つでトップまで突き抜けての逆転勝利。
彼が「スター」になれるかどうかは、現時点では分からない。
だが、その資質を感じさせるのには十分過ぎるほどの劇的な結末だった。
4位に終わった齋藤。
厳しい戦いだったのは事実だが、軽々にアガリへと向かわず、常に一撃を決めようと試みるスタイルは非常に印象に残った。
一つかみ合えば、彼が勝った未来も間違いなくあったはずだ。
打ち手としては中堅に差し掛かる年齢、きっとこれから、さらに強くなるはずだ。
増田は対局後のインタビューで、岡崎への12000放銃につながった自身の手順を悔いた。
この日の戦いは敗北に終わったが、彼もまた、確かな実力を持っていることは見ている人たちにも十分に伝わったと思う。
自団体のレジェンド・荒正義をほうふつとさせる男は、これからどんな麻雀を打ち、どんな結果を出していくのだろうか。
尻無濱は、つかみかけていた勝利が最後の最後に手の内から消えた。
だが、試合後には勝った岡崎を称賛し、悔しさを滲ませながらも彼らしく舞台から降りた。
それにしても。麻雀はもちろん、人を惹きつける不思議な魅力のある男だ。
負けはしたが、こうして多くの人の目に触れて存在を認知されたことで、新たな道が開けるのかもしれない。
勝った岡崎は、2度目のチャレンジでファイナルの舞台へ駒を進めた。