そして8巡目に目論み通り七対子のテンパイを入れ、先制リーチをかける!
あの配牌から先制リーチがかけられると誰が想像しただろうか。
待ちは2巡目にを切っているため出アガりも期待できそうだ。
多井は試合後のコメントで「には自信があった」と語っていた。
恐らくを切った地点でを待ち牌にする構想まであったのだろう。
極め付けはの残り枚数だ。なんとリーチ地点で残り3枚全てが山に眠っていた!
いったいこの男には何が見えているのだろうか…。
このリーチに立ち向かったのが、ドラ3のイーシャンテンだった黒沢だった。
リーチの一発目にを引いてしまう。迷った末、打を選択し無事通過。
その後現物のを打ちやや手狭に構えながら粘るも、最後はでの放銃となってしまった。
まさかの裏ドラ2枚で満貫。
このだが、2打目のが効いていることはもちろん、一打目からにせずとしたところに多井の技が光っている。
1打目から七対子は見ていたはずなので一打目をにする選択もあったはずだが、そうなると河が途端に派手になり変則手の気配が漂う。
が止まりかけていた黒沢も、河から変則手の気配を察知したらオリを選択したのではないだろうか。まさに多井の技が生んだアガリと言えるだろう。
オーラスを目前にして多井は3着アップが見える位置に、対して黒沢はトップ目から追いかける立場になってしまった。
そして南4局1本場、
タンヤオドラドラで3着への条件を満たした手を作った多井は果敢にリーチをかける。
ダマテンでも着順はアップするものの、トップ目の勝又が仕掛けているため、圧力をかけておろさせるリーチだ。
そのリーチに逆転の手を入れた黒沢がまたしても放銃してしまい…。
なんと多井は2着まで浮上!
着アップが厳しいと思われた箱割れ寸前から、見事な2着を勝ち取った。
南3局・南4局のアガりが目立った多井だが、
道中守備の技が光る局面もあった。
東4局では、この牌姿から唯一の対子であるに手をかけている。
三色が見えドラに引っ付けば高打点も狙える手。
しかし自分以外の3人が役牌を打ち出してからカンチャンターツを払っており全員早そうな河をしている。
字牌は3枚抱えていつリーチが飛んできてもいいようにしつつ、万が一ドラが重なって雀頭になったときだけ前に出る構えだ。
この局はドラ3の勝又とリーチをかけた近藤の捲り合いになり流局となった。
麻雀における守備力は目立たないことが多いが、多井のMリーグ通算成績がその重要性を物語っているように思える。
対して今回の試合で個人的に意外な放銃を見せたのが黒沢だった。
東3局1本場で、近藤のリーチに対して筋のを打って放銃となった局。
たしかにうまくいけばタンヤオ三色まで狙える手ではあるが、三色を作るには最低2筋通さなければならず、何より自身の手にドラが1枚もない。
現物もと4枚あるのでここはの対子落としになりそうな場面だが、黒沢はをノータイムで勝負した。
結果は裏ドラなしの3,200の放銃となった。
今までは強気な選択がハマり好成績を残してきた黒沢だが、今シーズンは選択と展開が微妙にずれてしまい苦戦を強いられている。
直近調子を戻してきている本田・瀬戸熊に続くことができれば、雷電が混戦から抜け出すきっかけとなるかもしれない。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
Twitter:@EzakiShinnosuke