それでも次に茅森にアガられたら決まり手になってしまう。
そして自分の手牌の価値は微妙…
様々な要素を勘案し、白鳥はピンズをしまい込む。
こうして朝倉のリーチが間に合い、茅森の放銃を生んだ。
白鳥の我慢が、逆転の可能性を残した。
南場も白鳥は少しずつ茅森に迫りつつ、僅差でオーラスを迎えることになる。
守るも攻めるも
オーラスは朝倉の5巡目リーチが3者の思惑を捻じ曲げた。
これは朝倉のリーチを受けた白鳥の手牌。点棒状況を確認してみよう。
白鳥はアガればトップだが朝倉にマンガンを放銃したら、なんとラスまで落ちてしまう。
朝倉はマンガンツモで3着、ハネマンツモで同点トップまでいくので、少なくともリーチのみやリーチドラ1の愚形などではなさそう。
ここに放銃することだけは許されない。白鳥は現物のに手をかける。
こうして現物を並べ続けた14巡目だった。
ふいにテンパイを果たす。中筋であるを切るか否か。
さきほどは「絶対に放銃は許されない」と言ったが、状況は刻々と変わっている。
終盤に差し掛かり、流局が見えてきたこと。
そして茅森とテンパイノーテンで逆転できること。
さらに朝倉のリーチはツモや裏期待の可能性もあること。(自分にドラが集まってきたのでなおさらだ)
リーチを受けた時点ではハイリスクローリターンだったのが、ローリスクハイリターンに逆転したのだ。この手をアガリきればトップだが、リーチ棒を出してしまうと朝倉との2人テンパイの時に茅森をまくれないので、白鳥はひょっこりツモと流局に期待してを縦に置いた。
果たせるかな
その後も現物を切り続け、白鳥はテンパイをキープ。
トップ奪取に成功した。
茅森はあの放銃がなければ僅差に迫られることもなく、別の展開になっていたかと思うと悔しいだろう。しかしその裏でピンズをおろさなかった白鳥がいた。
焦点の一局と言った意味が伝わっただろうか。
終わりなき旅路
私はつねづね考えている。
麻雀プロとはどういうことだろう。
少なくとも1つ言えることは「麻雀プロである以上、戦いは延々と続いていく」ということだ。
無様な負けを晒した後も、会心のトップを取った後も、必ず次の戦いはやってくる。
だからこそ、その瞬間の結果に一喜一憂することなく、最善を尽くそうとするのだ。
現状に満足してしまったら成長はない。
凡ミスも痛恨の放銃もそこで終わりじゃないし、アガリもトップも優勝もゴールではない。
麻雀プロであり続ける以上、終わりはないのだ。
白鳥はこのトップに酔いしれることなく気を引き締め、次の戦いへの準備をする。
敗れた三者も再起を誓ったことだろう。
──麻雀プロたちの戦いは、ずっと続いていく。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」